半年はんねん)” の例文
むすめとうが死んでから半年はんねんの間、五百いおは少しく精神の均衡を失して、夕暮になると、窓を開けて庭のやみを凝視していることがしばしばあった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
要吉ようきちは、東京のやまにある、あるさか水菓子屋みずがしや小僧こぞうさんです。要吉は、半年はんねんばかり前にいなかからでてきたのです。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
つけるから、三十円がたいへん重くなるんだね。なんでも三十円あると、四人の家族が半年はんねん食っていけると書いてあったが、そんなものかな、君
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
静岡しずおかの何でも町端まちはずれが、その人の父が其処そこの屋敷に住んだところ、半年はんねんばかりというものは不思議な出来事が続けさまで、発端は五月頃、庭へ五六輪
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
千萬かたじけなしと追從たら/\連立つれたちつゝ御殿場へ來りて條七方の同居どうきよとなり半年はんねんばかりも厄介やくかいに成し中條七は馬を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
過去半年はんねん良人をつとおもふ為に痩せ細つた自分は、欧洲へ来て更に母として衰へるのであらうとさへ想はれる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
けれども貴方生涯此家こゝにいる思召おぼしめしはありますまい、手前それを心得て居るが、拙者も止むを得ず此処こゝにいる、致し方がないから、半年はんねんすけろ、来年迄いろよ、有難うと御主命でね
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その人は半年はんねんばかりで帰って来て
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この看護婦は修善寺しゅぜんじ以来余が病院を出るまで半年はんねんの間始終しじゅう余のそばに附き切りに附いていた女である。余はことさらに彼の本名を呼んで町井石子嬢まちいいしこじょう町井石子嬢と云っていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)