はげま)” の例文
旧字:
斯ういふ弁護士の言葉は、枯れ萎れた丑松の心をはげまして、様子によつては頼んで見よう、働いて見ようといふ気を起させたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
慈ソノ意ヲ察シ声ヲはげまシテ発ヲ促ス。つい永訣えいけつトナル。余ヤ庚戌こうじゅつノ歳ヲ以テ金城ノ官舎ニ生レ而シテ今コレヲ金城ノ館ニ聞ク。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
萌黄もえぎの風呂敷につつんだその蒲団を脊負いださせるとき、お島は気嵩きがさな調子で、その時までついて来た順吉をはげました。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
爾して箱の所へ返ると、秀子は余をはげます気か「此の箱を開くのに少しも気の咎める所は有りません、開かずに置いてこそ済まぬと云う者です、サア先ず此の箱からお開き成さい」
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
先程から黙って聞いていた時雄は、男が余りに頑固なのに、急に声をはげまして
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
やう/\にしてそらを見る所にいたりしに、谷底の雪中さむさはげしく手足も亀手かゞまり一歩ひとあしもはこびがたく、かくては凍死こゞえしぬべしと心をはげまし猶みちもあるかと百歩はんちやうばかり行たりけん、滝ある所にいたり四方を見るに
淑女巨人と一堂につどい思想を交換し事業をかくするは今汝の及ばざる所、しかれどももし汝にして四十八文字もんじを解するを得ば、聖書なる世界文学の汝とともにあるなり、以て汝をはげまし汝をなかしむべし
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
一旦蓮華寺の娘と成つた以上は、奈何どんな辛いことがあらうと決してうちへ帰るな。そこを勤め抜くのが孝行といふものだ。とまあ、すかしたりはげましたりして、無理やりに娘を追立てゝやつたよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
親子はこれにはげまされて心慰こゝろひらけ酒肴しゆかうをいだして人々にすゝむ。