加答児カタル)” の例文
六日に至って咳嗽がいそう甚しく、発熱して就蓐じゅじょくし、つい加答児カタル性肺炎のために命をおとした。嗣子終吉さんは今の下渋谷しもしぶやの家に移った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
急性腸胃加答児カタルという医師の診断におどろかされて、兄からわたくしのところへ電報を打ってよこしたのでございます。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
兎に角芭蕉の口の悪いのにはしばしば門人たちも悩まされたらしい。唯幸ひにこの諷刺家は今をること二百年ばかり前に腸加答児カタルか何かの為に往生した。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
九月三日「明日は出発せんと云ふに頭重く心地悪敷ければ片山医師の診察を乞ふに肺尖加答児カタルなりとの事なり。」
『団栗』のことなど (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
秀雄ちゃんは早速お医者さんに来てもらいましたら大腸加答児カタルだそうで昨日あたりからやっとくなって来ました。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
外から厚い板でもって囲んであります。これなら籠の中で鼠が腸加答児カタルをやっても大丈夫です
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ある年は母がひどい腸加答児カタルに罹って半年ほど後までも祟られた。またある年は父子三人とも熱が出たり腸を害したりして、不安心な怪しげな医者の手にかからねばならなかった。
小さな出来事 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
だがみっともない子が多い。この国には加答児カタルにかかっている子供が多いからである。
肺尖加答児カタルを病んだこともあるそうだった。そのことだなと順造は思った。
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
此処ここに合葬せられている仏は、鹿島清兵衛。慶応二年生。死亡大正十二年十月十日。病名慢性腸加答児カタル。ゑ津。明治十三年十一月二十日生。死亡大正十四年四月二十二日。病名肝臓腫瘍しゅよう。大一郎。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
髭先ひげさきのはねあがりたる当世才子、高慢の鼻をつまみ眼鏡めがねゆゝしく、父母干渉の弊害をときまくりて御異見の口に封蝋ふうろう付玉つけたまいしを一日粗造のブランディに腸加答児カタル起して閉口頓首とんしゅの折柄、昔風の思い付
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
後影うしろかげ見送みおくつて、あれは腸加答児カタルに違ないと三四郎に教へて呉れた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
幸子はいつも冬の間に気管支加答児カタルわずらう癖があり、悪くすれば肺炎になりますと医者におどかされて一箇月近くも臥るのが例になっているので、些細ささいな風邪にもひどく用心するのであるが
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その死因は脳充血とか心臓破裂とか急性腎臓炎とか大腸加答児カタルとかいうような、急性の病気が多かったらしい。それには罹災りさい後のよんどころない不摂生もあろう。罹災後の重なる心労もあろう。
九月四日 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「大腸加答児カタルで便に血が交る云うことあるやろか」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)