分疏いいわけ)” の例文
「折が悪いから何となく何だけれども、シカシ我慢しているも馬鹿気ている」ト種々さまざま分疏いいわけをして、文三はついに二階を降りた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
姫の目はよくものいうのみにあらず、人のいわぬことをもよく聞きたりけん、分疏いいわけのように語をつぎて
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして分疏いいわけのように、こう云った。「余計な事を聞くようだが、わたしは小説を書くものだからね。」
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
ふさげば生憎あいにくにお辰の面影あり/\と、涙さしぐみて、分疏いいわけしたき風情、何処どこに憎い所なし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つまり別に分疏いいわけがなくって、「時間」に罪を背負わせるのですね。
辻馬車 (新字新仮名) / フェレンツ・モルナール(著)
そのくせ袖手傍看しゅうしゅぼうかん分疏いいわけしかしません。
坐相撲すわりずもうはなし、体操、音楽のうわさ、取締との議論、賄方まかないかた征討の義挙から、試験の模様、落第の分疏いいわけに至るまで、およそ偶然にむねに浮んだ事は、月足らずの水子みずこ思想
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
去就の自由がまだあるのなんのと、覚束ない分疏いいわけをして見るものの、いかなる詭弁きべん的見解を以てしても、その自由のおおきさが距離の反比例に加わるとは思われない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と不図何か憶出おもいだして我と我に分疏いいわけを言て見たが、まだ何処どこかくすぐられるようで……不安心で。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そんなつひとおり分疏いいわけを聞くあたいだとお思ひか、帰るならお帰りと心強くいなせしに、一座では口もろくにかぬあのくわせもののおとくめ、みちで待ち受けてきしを今朝聞いたやしさ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そして自分で自分に分疏いいわけをする。それはこうである。古言は宝である。しかし什襲じゅうしゅうしてこれを蔵しておくのは、宝の持ちぐされである。たとい尊重して用いずにおくにしても、用いざれば死物である。
空車 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
分疏いいわけのやうに語をぎて
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)