刀鍛冶かたなかじ)” の例文
剣道はすたれ、刀剣も用うるところなく、良心ある刀鍛冶かたなかじは偽作以外に身の立てられないのを恥じて百姓のくわかまを打つという変わり方だ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「私は、あの時、朝麿様と一緒にいたこずえという者でございますの。……父は、粟田口宗次むねつぐといって、あの近くで、刀鍛冶かたなかじ生業なりわいにしています」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔の刀鍛冶かたなかじが明治維新この方、新しい職を求めてなたまさかり手斧ちょうなというような日常の用具を作るようになりました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
御存じの方は、武生と言えば、ああ、水のきれいな処かと言われます——この水が鐘を鍛えるのに適するそうで、かまなべ、庖丁、一切の名産——その昔は、聞えた刀鍛冶かたなかじも住みました。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
土蔵破むすめやぶりで江戸中を騒がし長い草鞋を穿いていたまんじの富五郎という荒事あらごと稼人かせぎて、相州鎌倉はおうぎやつざい刀鍛冶かたなかじ不動坊祐貞ふどうぼうすけさだかたへ押し入って召捕られ、伝馬町へ差立てということになったのが
大昔は、刀鍛冶かたなかじたちが、行先を知らせず、ひとりで山の中へはいりこみ、一ヶ月も二ヶ月も家へかえらないことがあった。それは刀鍛冶が、この水鉛の鉱石を探すために山の中へ深くはいりこむのだ。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「また、刀鍛冶かたなかじの娘だと、おっしゃったのでしょう。」
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そして武蔵の推挙に依って、それから永国は三十人扶持ぶちで細川家に抱えられ、代々、藩の刀鍛冶かたなかじとして、城下の高田原楠町に住んでいたそうである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美濃で語らなければならないのは、関町せきまちの刃物であります。昔の刀鍛冶かたなかじの技が伝えられ、質の優れた刃物を育てるに至ったのだと思われます。短刀だとか小刀などに実によい技を示します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
近江おうみ刀鍛冶かたなかじ堀井来助ほりいらいすけ老人は、刀鍛冶のほうの名前を胤吉たねよしといいました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そうともよ。わしの子じゃ、刀鍛冶かたなかじの子じゃ。家はねえでも、わしにゃ、子があるぞよ」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、すぐ後悔したことは諸国の刀鍛冶かたなかじぜんたいへ、破門廻状がまわった事で、もうそうなると刀鍛冶では、飯がくえない。他へ弟子につくことも、勝手に刀をつこともできないのがおきてだ。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刀鍛冶かたなかじじゃ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)