処女しょじょ)” の例文
旧字:處女
だからお君さんの中にある処女しょじょの新鮮な直観性は、どうかするとこのランスロットのすこぶる怪しげな正体を感ずる事がないでもない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
油学士は、かねてねらっていた副主席の話を、思いがけなく醤の口からきかされたので、彼は処女しょじょの如く、ぽっと頬を染め
わずかに百日もたぬ間にこれほどに処女しょじょと商売人とは変わるものかと、いた口がしばらくじなかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
女教師は四十余の処女しょじょなりしが、家の娘のたかぶりたるよりは、我を愛すること深く、三年みとせがほどに多くもあらぬ教師の蔵書、ことごとく読みき。ひがよみはさこそ多かりけめ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
列車の中からはある限りの顔が二人を見迎え見送るので、青年が物慣れない処女しょじょのようにはにかんで、しかも自分ながら自分をおこっているのが葉子にはおもしろくながめやられた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
このいきもつかず流れている大河たいがは、どのへんから出て来ているだろうかと思ったことがある。維也納ウインナ生れの碧眼へきがん処女しょじょとふたりで旅をして、ふたりして此の大河のながれを見ていた時である。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
𤢖は何故なにゆえに冬子を奪い出して来たのであろう。彼等の料見は到底普通の人間の想像しべきかぎりでないが、にかくある罪悪を犯すべき犠牲いけにえとして、若い処女しょじょを担ぎ出して来たものと察せられた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
処女しょじょであったきのうの自分が、もう思い出のものになっている彼女には、武蔵を考えたり想ったりすることも、もう処女おとめであった頃のように、未来の花を夢想して考えることはできなくなっていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
篤介は広子にも顔馴染かおなじみのあるある洋画研究所の生徒だった。処女しょじょ時代の彼女は妹と一しょに、この画の具だらけの青年をひそかに「さる」と諢名あだなしていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
処女しょじょはずかしがるは何が一番はなはだしきかというに、自分のからだにありて、親にも示すべからざるものあるがためである。これは秘密にすべきものではあるが、善悪の標準をもって論ずる限りではない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)