凝固こりかた)” の例文
引放さんとなしけれ共お政は一※に我がをつとの無實の罪を辯解いひとかんと凝固こりかたまつたる念力ゆゑいつかなくつわを少しも放さずをつといのちかゝはる大事何卒御慈悲に御取上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
之を又真摯しんしの態度だとかいって感服する同臭味どうしゅうみの人が広い世間には無いでもなかったので、私は老人がお宗旨に凝るように、いよいよ文学に凝固こりかたまって、政治が何だ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これ彼と結びてはたらき、まづ凝固こりかたまらせ、後己が材としてそのかたとゝのへる物に生命いのちを與ふ 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
御自分の無良心な、二重人格式の性格の人知れぬ強さを、どこどこまでも深刻に楽しみ、誇って行こうとしておられる、変態趣味的に極端な個人主義の凝固こりかたまりなのです。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その眼で——今、暗い中空から燈火あかりのない甲板の上を見下ろすと、なるほど、そう言われてみるとその通り、一人の小さな人体がひざまずいて、一心に凝固こりかたまっている形が、ありありと認められる。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は、愛もにくしみも、乃至ないしまた性欲も忘れて、この象牙ぞうげの山のような、巨大な乳房ちぶさを見守った。そうして、驚嘆の余り、寝床の汗臭いにおいも忘れたのか、いつまでも凝固こりかたまったように動かなかった。
女体 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小田卷直次郎に、どんな怨があつての仕業か解りませんが、首を斬つて、犬の首を繼いだのは、底の知れない殘虐な惡戯いたづらでなければ、深怨に凝固こりかたまつた人間の、惡魔的な復讐でなければなりません。
申渡し表門には封印ふういんし御徒士目附御小人目附ども晝夜ちうや嚴重げんぢうに番をぞ致しける良藥は口ににが忠言ちうげんみゝさからふの先言せんげんむべなるかな大岡越前守は忠義一※いちづ凝固こりかたまりて天一坊の身分再吟味の直願ぢきぐわん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
文壇の大家になると、古手の思想が凝固こりかたまって、其人の吾は之に圧倒せられ、わずか残喘ざんぜんを保っているようなのが幾らもある。斯ういう人が、現実に触れると、気の毒な程他愛の無い人になる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
小田巻直次郎に、どんなうらみがあっての仕業か解りませんが、首を斬って、犬の首を継いだのは、底の知れない残虐な悪戯いたずらでなければ、深怨に凝固こりかたまった人間の、悪魔的な復讐でなければなりません。