冗戯じょうだん)” の例文
そこで儲けている一つかみの黄金があれば、一村の飢餓きがが救われるであろうほどの物を、まるで、冗戯じょうだんみたいに、遣り取りしていた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この涼しさに元気づいて、半分は冗戯じょうだんだが、旅をすれば色々の事がある。駿州すんしゅうの阿部川もちは、そっくりしょうのものに木でこしらえたのを、盆にのせて、看板に出してあると云います。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その間また断えず主任教授の理不尽な圧迫が学閥なき私に加えられたので、今日その当時を回想すると面白かったとは冗戯じょうだん半分いえない事も無いでは無いが、しかし誠に閉口した。
冗戯じょうだん執拗しつこいと直き腹を立てまして、なんでも、江戸のとびの衆を、船から二三人かいで以て叩き落したと云いますからね。あなた方にそんな事も御座いますまいが、どうかそのおツモリで
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
若いおかみさんは、さっさと立って裏の川を覗きながら、今度はそこで晩の支度したくをしている抱え船頭と、明るい声で何か冗戯じょうだんを云っていた。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸の庶民は、法の重圧や、疾苦を、こんな冗戯じょうだん洒落しゃれでまぎらすすべのみ知って、「なぜ人間が」とは考えなかった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何かと存ずれば、友人として冗戯じょうだんも程になされい。——降伏を乞いに来たのかと思うたゆえ、会見をゆるしたのじゃ。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご冗戯じょうだんでしょう。新渡しんとじゃあござんせんぜ。これくらいな古渡こわたりは、長崎あっちだって滅多めったにもうある品じゃないんで」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗戯じょうだんおっしゃっちゃいけませんぜ。娘は宿元へ引き取ってからもう半月にもなるんだ。身を退いた後々あとあとの失くなり物まで、罪を負わせられて堪るものか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薪の束に腰をおろし、大勢の者の他愛ない冗戯じょうだんを、同苦坊はニヤニヤ笑って聞いていた。虱にも正月を——と、今ひとりがいったことばに合掌していた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、紙と矢立やたてを出して、筆談を試みようとしたが、全然、盲目だ。冗戯じょうだんを書いてみせても、笑いもしない。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「首を? ……冗戯じょうだんではない、葬式は坊主のつとめ。おぬしに、死骸をまかせては、寺の商売が立ちゆかぬ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱実はそんな男たちやまた養母ははを、心のうちであかの他人に思っていた。どんな冗戯じょうだんでもいえるのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「礼儀を重んじなければいけないといったくせに、その兵法者が、今みたいな冗戯じょうだんをしてもいいのけい」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがすむと、初めて酒が出る順序になって、話は依然として仕事のことでも、だいぶくつろいだ空気になり、時々、冗戯じょうだんが交じる、洒落しゃれが出る。笑い声が爆発する。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗戯じょうだん云っちゃアいけません、そんな意気地なしじゃねえ心意つもりだが、聞けば、今夜の手曳きをする女って奴が、笊組の世話になっているお延だというじゃありませんか。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗戯じょうだんをいってるまに、くらくなってしまう。じゃあ、ほんとに露八さんも、東京へ帰る気ね」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく冗戯じょうだんばかりいっていらした佐野竹之介様だとか、お気さくな黒沢忠三郎様だとか、お馴じみのお方の名が何人も見えるんで、瓦版を仏壇に上げて拝んだものでございます。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗戯じょうだんにも、人間仲間で、こんなことばを聞くことが近年では、めずらしくもなくなった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に、小次郎には、女護にょごノ国へでも来た思いがした。——彼には、人々のような冗戯じょうだんも口に出ず、ただ目をみはって、近づく岸の家々と、幾艘もの、遊女たちの船に、見とれていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泣くな、泣くな、貂蝉、今のことばは、冗戯じょうだんじゃよ。なんでそなたを、呂布になど与えるものか。——明日、郿塢びうの城へ帰ろう。郿塢には、三十年の兵糧と、数百万の兵が蓄えてある。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗戯じょうだん云っちゃいけねえ、博奕と喧嘩は待ったなしだ。この頃日の出の勢いで売り出した親分が、賭場の作法を知らねえじゃ通るめえ。丁肩へこの通り揃えた駒をどうしてくれるんだ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やや気色が晴れてきたとみえて居酒屋の亭主に、冗戯じょうだんなどいいだした。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海賊とは、冗戯じょうだんであろう。小次郎は、うち消して、笑っていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗戯じょうだんじゃない。じゃあ先刻泥棒泥棒と呶鳴ったのは誰だ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると彦兵衛は冗戯じょうだんでも聞いている様に薄笑いをした。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歩きながら、利助はいつもの冗戯じょうだん半分にこう云う。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『嘘を仰せられい。伝右どの、冗戯じょうだんでござります』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつも露八は、冗戯じょうだんのように、そう云っていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふ、ふ、冗戯じょうだんをいいっこなしさ」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ハハハ、冗戯じょうだんですよ。冗戯冗戯』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「え。今のは、冗戯じょうだんなのけ」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、冗戯じょうだんでなく」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)