内済ないさい)” の例文
旧字:内濟
当家には公儀へ内密におびただしい金銀が隠してあるということを承わってその検分に来た、さあ隠さずそれを出してしまえば内済ないさいですましてやるが
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その時はこねくられたとも何とも、進退きわまり大騒ぎになって、れから玉造たまつくりの与力に少し由縁ゆかりを得て、ソレに泣付なきつい内済ないさいたのんで、ヤット無事に収まった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とこれは、内済ないさいの申入れだった。私は黙っていた。四人のものはもうそれけで各自めいめい床へ潜り込んだ。予定の行動で方々から私の枕元へ這って来たのだった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
した。主人のわしう手をついてあやまるから、何卒どうぞ内済ないさいにしてくれ。其かわり君の将来は必俺が面倒を見る。屹度きっと成功さす。これで一先ず内地に帰ってくれ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何うか何分なにぶんにも此の事は御内分におはからい下さるれば千万せんばん有難うございます、何分にも内済ないさいに願います
こっちのあばたも内済ないさいにしたいくらいなところだから、ただでえる毛をぜにを出して刈り込ませて、私は頭蓋骨ずがいこつの上まで天然痘てんねんとうにやられましたよと吹聴ふいちょうする必要はあるまい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
取りかえしたのですよ。事はいわば内済ないさいになりましたが、そのために山本は職を失いました
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
貴方も快くはあるまいが、この際先方にわびを入れて、内済ないさいにしてもらったら何うかと云うのだ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
遊廓くるわの喧嘩だから騒ぎはそれきりで済んでいるし、吉野様からお内緒へも若い衆へも、そっと、内済ないさいにと口をきいてはあるが、その子がやたらに、宮本武蔵の弟子だと威張りちらしたので
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし旦那が内済ないさいにして下さらなかったらどうなったと思う
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さあ三千両の金を出せば内済ないさいにしてやる、それを出さなければ甲府へ連れて行って磔刑はりつけに行うと、こう言って夜通し責めているのでございますから、ちょうど婚礼最中の当家は上を下への大騒ぎで
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
殿「何事も内済ないさいに致せ、これそある、金子をつかわせ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)