其丈それだけ)” の例文
あゝ、もう沢山たくさんだ、是上出来たら奈何どうしよう、一人子供がふえれば其丈それだけ貧苦を増すのだと思つても、出来るものは君どうも仕方が無いぢやないか。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
君が前年出した詩集の伊太利イタリイに遊んだ時の諸作に比べると近頃の詩は苦味にがみが加はつて来た。其丈それだけ世間の圧迫を君が感ずる様に成つたのだらうと僕は云つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
格子こうしそとには公衆こうしゆう次第しだいむらがつてる。アンドレイ、エヒミチは、ミハイル、アウエリヤヌヰチの公務こうむ邪魔じやまるのをおそれて、はなし其丈それだけにして立上たちあがり、かれわかれて郵便局いうびんきよくた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼の通り弱いものだから、其丈それだけ哀憐あはれみも増すのだらうと思ふね。家内はまた弟の進贔顧びいき。何ぞといふと、省吾の方を邪魔にして、無暗むやみに叱るやうなことを為る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其丈それだけなら申分まうしぶんは無かつたのだが、呉服屋夫婦は道珍和上にめあはせようと為た娘を、今度の朗然和上に差上さしあげて是非ぜひ岡崎御坊に住ませたい、最愛の娘を高僧かうそうに捧げると云ふ事が
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
『どうするもうするも無いぢや有ませんか。貴方と私とは全く無関係——はゝゝゝゝ、御話は其丈それだけです。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)