ひがみ)” の例文
情無い、もう不具根性かたわこんじょうになったのか、ひがみも出て、我儘わがままか知らぬが、くさくさするので飛んだことをした、悪く思わないでおくれ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんなの、あんたのひがみよ。あたしが褒めなくなって、皆んなが褒めるだけ、上手くなったじゃないの」
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
私のひがみを別にして、私は過去において、多くの人から馬鹿にされたというにがい記憶をもっている。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
智識を与えるほどその体験が無いために疑いやひがみを増して来る。
明暗 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
うらみと、ひがみいきどおりとをもって見た世に対して、わば復讎ふくしゅう的におのれが腕で幾多遊冶郎ゆうやろうを活殺して、そのくらい、その血をむることをもって、精魂の痛苦をいやそうとしたが
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかな浪漫的ロマンチックな敬太郎もこの男に頼んだら好い地位が得られるとは想像し得なかった。けれどもさも軽々と云って退ける彼の愛嬌あいきょうを、翻弄ほんろうと解釈するほどのひがみももたなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もしこれが吉川夫人か誰かの口から出るなら、それがもっとずっとつまらない説でも、君はえりを正して聴くに違ないんだ。いや僕のひがみでも何でもない、争うべからざる事実だよ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕にひがみがあるでしょうか」と市蔵は落ちついて聞いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)