俸給ほうきゅう)” の例文
それが彼の顔を見ると、「俸給ほうきゅうですね」と一言ひとこと云った。彼も「そうです」と一言答えた。が、主計官は用が多いのか、容易よういに月給を渡さなかった。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
俸給ほうきゅうを多くとり、賃銀をたくさんとるような、いわゆる甲斐性かいしょうのある、偉い人を作るのが目的ではないのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
ずうっと下の方でしたし俸給ほうきゅうもほんのわずかでしたが、受持ちが標本の採集や整理で生れ付き好きなことでしたから、わたくしは毎日ずいぶん愉快にはたらきました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
俸給ほうきゅうはいくらでもおのぞみどおりだしますから、どうか二、三年、あちらでご開業ねがえますまいか。植民地では、よい医師がないので、みんなが本当にこまっております
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
またわずかな金のためにおおぜいの官吏の首を切ったり俸給ほうきゅうを減らしたりするのも結構であるが
函館の大火について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「へえ、俸給ほうきゅうですか。俸給なんかどうでもいいんですが、上がれば上がった方がいいですね」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで役所に使わるる者も会社に働く者も、俸給ほうきゅうを受けるからとて、必ずしもそれだけで身の独立を失うものでない。また実際の手続きとしては被傭者ひようしゃは志願し会社に入る。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
役所よりの帰途きと、予が家に立寄たちより、今日俸給ほうきゅうを受取りたりとて、一歩銀いちぶぎん廿五両づつみ手拭てぬぐいにくるみてげ来られ、予がさいしめし、今日きょうもらって来ました、勇気ゆうきはこれに在りとて大笑たいしょうせられたり。
いやなに、ざっくばらんの話ですが、貴女あなたが金博士にわれわれをとりもって下されば、博士の貴女に対する信頼は五倍も十倍も増しますよ。俸給ほうきゅうも上るでしょうし、うまいものも喰べられる。
彼女は俸給ほうきゅうのほとんど全部を親に取りあげられ、半衿はんえり一つ白粉おしろいびん買うにも並々ならぬ苦心があり、いつも身綺麗みぎれいにしている芸者の身の上がうらやましくなり、縹緻きりょうもまんざらでないところから
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
得るところの利潤はすなわち賞与であり俸給ほうきゅうである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
折々おりおり新聞に伝えられるぼう学者は何千円の俸給ほうきゅうを取るが、毎日教場きょうじょうのぞみ授業するとき、たまたま生徒が何か質問をすると、それはむずかしい、字引じびきを引いてもちょっと分かるまい
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さらに具体ぐたい的にいえば知人の恩恵によりて位地を得、俸給ほうきゅうを受くる者は、その知人あるいはその上官・社長・重役らの説に心ならずも服従し、反対説あるもこれを述ぶることをはばか
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)