俚謡りよう)” の例文
旧字:俚謠
これに反して純然たる性格を代表した鼻の表現の批評に「意地悪根性の鼻まがり、ぬかるみすべってツンのめろ」という俚謡りようがあります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と得意の俚謡りようをうたったことが耳に残ります。眼の見えた以前の人は暫くき、眼が見えなくなってから後の人の面影が知りたい。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
俚謡りように「竹の柱に茅の檐」と唱うのも、「手鍋提げても」と唱うのも、貧即不幸福の妄見を照破してしまっている手近い例だ。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは年代が経つうちに、その歌曲に合せた新作も出来るでしょうし、諸国の俚謡りようだの、小唄などが混入して歌われることは随分あります。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
外国物がいこくものでは、アベ=マリアとか、粗朴そぼくながら、のつながりに、哀愁あいしゅうをもよおす日本にほん俚謡りようなどをあには、このみました。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はじめてその事実のあやまりを摘発てきはつして世に発表したのは私であって、記事の題は、「実物上から潮来出島いたこでじま俚謡りよう
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
現にこの頃では、妻の不品行をふうした俚謡りようをうたって、私の宅の前を通るものさえございます。私として、どうして、それを黙視する事が出来ましょう。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このあたりで古い歴史のある俚謡りよう、木曾ぶしの絃歌が、赤く曇った湯気の町にサンザめきだす頃になると
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俚謡りようにまでも唄われている、その名古屋の大城は、慶長十四年十一月から、同十六年十二月迄、約二ケ年の短日月で、造り上げた所の城であるが、豊公恩顧の二十余大名六百三十九万石に課し
天主閣の音 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの時にあの罪のない俚謡りようから流れ出た自由な明るい心持ちは三十年後の今日まで消えずに残っていて、行きづまりがちな私の心に有益な転機を与え、しゃちこ張りたがる気分にゆとりを与える。
蓄音機 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
という俚謡りようの生じたのは至極尤もであろう。
山と村 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
孔明の新妻が、不縹緻ぶきりょうなことは、この俚謡りようもいっているとおり、村では噂のたねらしい。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本多忠刻ただときと恋の勝利の歓楽に酔って、坂崎を憤死せしめた罪多き女、その後半生は吉田通ればの俚謡りようにうたわれて、淫蕩いんとうのかぎりを尽した劇中の人、人もあろうに宇治山田の米友は、この女のために
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この俚謡りようの意味がまったくめちゃくちゃになっている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
途々みちみち、家康のために、たかを放って、終日ひねもす、野に鷹狩をして遊んだり、夜は、里人さとびと俚謡りようや土俗舞を客舎に演じさせて酒宴したり、いかにもただ旅を楽しむための旅としか見えなかった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あまねく人の知っているかの潮来節いたこぶし俚謡りよう
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
どうだな、街の俚謡りようがそううとうていると聞けば、めでたい辻占であるまいか
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから附近の牧童や里人さとびとも今にそれを俚謡りようとして歌う。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)