侍従じじゅう)” の例文
おまけに散々な目にわされて、最後には命までも落すようなことになった相手は、侍従じじゅうきみ、———世にう本院の侍従であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
嫡子ちゃくし六丸は六年前に元服して将軍家からみつの字を賜わり、光貞みつさだと名のって、従四位下侍従じじゅう肥後守ひごのかみにせられている。今年十七歳である。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
内大臣の息子たちである左少将さしょうしょう少納言しょうなごん兵衛佐ひょうえのすけ侍従じじゅう大夫だいふなどという人らもこのおやしきへ来るが、御簾みすの中へはいることは許されていないのである。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
遥かに、信仰をよせているほか、越前三位の妻小宰相こざいしょう資賢すけかたの娘玉琴たまこと信実のぶざね伯母人おばびと、三条の小川侍従じじゅうの姫、花園准后じゅんごうの侍女三河のつぼね、伊豆の走り湯の妙真尼など
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世々じゅ四位下侍従じじゅうにも進み、網代あじろ輿こし爪折つまおり傘を許され、由緒ゆいしょの深いりっぱなお身分、そのお方のご家老として、世にときめいた吉田玄蕃げんば様の一族の長者として
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人々は、おもての通りに出て、皇帝のおぐあいはいかがですか、と、侍従じじゅうにたずねました。
むに已まれぬ行きがゝりで侍従じじゅうきみを追い廻すような羽目になり、へんにらされているものだから、一途に心がその方へばかり向いているのであるけれども
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、本丸の上段、毛皮のしとねに、どッかりかまえた修理亮勝家しゅりのすけかついえは、その年、五十三の老将である。こよいも、岐阜ぎふ侍従じじゅう信孝のぶたかからの飛状ひじょうを読みおわって、憤怒ふんぬおもてにみなぎらしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もすそをささげる役目の侍従じじゅうたちは、両手をゆかのほうへのばして、もすそを取りあげるようなふりをしました。こうして、何かをささげているようなかっこうをしながら、歩きだしました。
たゞ平中は業平よりも時代がやゝ下っており、今の墨塗りの話や、本院の侍従じじゅう翻弄ほんろうされた話などから想像すると、業平と違っていくらか三枚目的なところがあったような気がする。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
王女さまのぐるりをとりまいて、女官たちがおつきを、そのおつきがまたおつきを、したがえ、侍従じじゅうがけらいの、またそのけらいをしたがえ、それがまた、めいめい小姓こしょうをひきつれて立っていました。
そこで、皇帝は、侍従じじゅうを呼びました。