使用つか)” の例文
なぜなら、そのなかに使用つかはれた「もくろみ」といふ言葉が、彼等の間ではやがて直ちに『失敗』といふことを聯想れんさうさせるものであつたから。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
母に言付けられて、お俊は次の間に置いてあるきりの机の方へ行った。実の使用つかっていた机だ。その抽匣ひきだしの中から、最近に来た父の手紙を取出した。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それを十日も経たない内にもう使用つかッちまって、またくれろサ。宿所うちならこだわりを附けてやるんだけれども……
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「確かに自宅で使用つかって居る手拭で頸を強く締めて深く喰い込んで居ても、未だ他殺で無いと言われますか」
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
「寧ろこの使用つかい古るした葡萄ぶどうのような眼球めのたまえぐり出したいのが僕の願です!」と岡本は思わず卓を打った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
鏡磨かがみとぎ師は柘榴の実を使用つかったもの、古い絵草子などにも鏡ぎの側には柘榴のがよくいてある……でその名の意は、かがみ入る(鏡入る)の洒落しゃれから来たもの
ついした談話はなしの、いとぐちに、身柄を人に悟られまい、無益むだな金を使用つかふまいと、その用心に、なにもかも、一心一手におさめて置き。天晴れの男に添はせむその時に、拭えぬ曇りは是非もなし。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
花と、絹布けんぷとは女こそ使用つかふなれ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
何物なんにも君には置いて行くようなものが無いが、そのくわげようと思って、とっといた」と三吉は自分が使用つかった鍬の置いてある方を指して見せた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平素ふだんはこの部屋はいてる。お客でもするとか、馬市でも立つとか、何か特別の場合でなければ使用つかわない。お前さんと、直樹さんと、正太と、三人ここに寝かそう」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
学校の小使が別れに来たから、この人には使用つかっていた鍬を置いて行くことにした。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼様あんな立派なことを言つて居ましても、畢竟つまり猪子といふ人を抱きこんで、道具に使用つかふといふ腹に相違ないんです。彼の男が高尚らしいやうなことを言ふかと思ふと、私は噴飯ふきだしたくなる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
有力者のうちなぞに、よろこびもありかなしみもあれば、人と同じやうに言ひ入れて、振舞の座には神主坊主と同席にゑられ、すこしは地酒の飲みやうも覚え、土地の言葉も可笑をかしくなく使用つかへる頃には
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)