住宅すまい)” の例文
土地の大地主で、数多たくさんの借家を持ち、それで、住宅すまい向前むこうに酒や醤油の店を持っている広栄の家は、鮫洲さめず大尽だいじんとして通っていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そしてもなく、わたくし住宅すまいとして、うみから二三ちょう引込ひっこんだ、小高こだかおかに、土塀どべいをめぐらした、ささやかな隠宅いんたくててくださいました。
「桜井先生や、広岡先生には、せめて御住宅すまいぐらいを造って上げたいのが、私共の希望なんですけれど……町のために御苦労願って……」
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いいえ。御主人は別のうちよ。玉の井館ッて云う寄席よせがあるでしょう。その裏に住宅すまいがあるのよ。毎晩十二時になると帳面を見にくるわ。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから二月経過たつと磯吉はお源と同年輩おなじとしごろの女を女房に持って、渋谷村に住んでいたが、矢張やはり豚小屋同然の住宅すまいであった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
鮨町を細川越中の下屋敷へ抜けようとする一廓が神田代地、そこにいかにも富限者らしい造作つくりがあって近所の人は一口に因業御殿いんごうごてんと呼んでいるが、これこそ因業家主が通名の大家久兵衛が住宅すまい
そのほかに家老小林の住宅すまいは、別に一軒建ちになっておりました
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
二階建、格子戸こうしど、見たところは小官吏こやくにん住宅すまいらしく。女姓名おんななまえだけに金貸でもそうに見える。一度は引返えして手紙で言おうかとも思ったが、何しろ一大事と、自分は思切って格子戸をくぐった。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
住宅すまいの方から、お昼と夜の十二時に持って来てくれるのよ。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)