“仮(たと)” の例文
旧字:假
併(しか)し着実な其道(そのみち)の人の批判では仮(たと)ひ一円に下(さが)つても会社経営では四五割、個人経営では六七割の利益は確かだと云つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
つけた。仮(たと)えば、煙管の中に、水がたまる。煙と、火ばかりで、水の縁が無いのに水ができる。これは、何故であろう?
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
又、仮(たと)い野心が無いにしても、人間に対して屡々(しばしば)危害を加える山𤢖の如きものを、唯(ただ)見逃して置くという法は無い。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
仮(たと)えば矢走(やば)せの帰帆を意味するのだろう、僅に白い大きな円い月とまばらにとぶ雁で夕景を偲ばせる湖面に、そばだつ山は、なだらかな、浮世絵風の山である。
一九二三年夏 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
仮(たと)い一旦(いったん)の憤(いきどお)りを招かば招け、かえって互いのためなるべしとて、ある日幼児を背負いて、窃(ひそ)かに帰京せんと謀(はか)りけるに、中途にして親族の人に支えられ、その目的を達する能(あた)わざりしが
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
仮(たと)い被害者は誰にもあれ、其(そ)の加害者は何(いず)れも𤢖であると断定して了(しま)えば、無造作に解釈は着くのであるが、𤢖以外にも何等かの因縁があるらしく感じられた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そこで——この写真だの、電信機などの出来たのは、何んの力かと申すと、理化学によってじゃ。理化学と申す学文は、仮(たと)えば、水は何から出来ているか、ということを研究する」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
若(もし)もウカウカと鴨に釣られて往こうものなら、此の崖から逆落しに滑り落ちるに相違なく、仮(たと)え生命に別条ないとしても、屹(きっ)と大怪我をする所だ、アア危いと顔を見合せて、旧(もと)の処へ引返すと
仮(たと)えば、一人の敵将を呪い殺すということは、正義の味方を勝たしめることで——それは、一国一藩が救われ、ひいては天下のためになることで——つまり、小の虫を殺して、大の虫を助ける
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)