人影じんえい)” の例文
おきなる島山しまやまいたゞき紫嵐しらんつゝまれ、天地てんちるとして清新せいしんたされてときはま寂寞じやくばくとしていつ人影じんえいなく、おだやかにせてはへすなみろう
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
はすでに十一時に近づきぬ。かわら凄涼せいりょうとして一箇ひとり人影じんえいを見ず、天高く、露気ろきひややかに、月のみぞひとり澄めりける。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月影白き前艦橋に、二個の人影じんえいあり。その一は艦橋の左端に凝立して動かず。一は靴音静かに、墨より黒き影をひきつつ、五歩にしてとどまり、十歩にして返る。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
見渡すかぎり、両側の森林これを覆ふのみにて、一個の人影じんえいすらなく、一縷いちるの軽煙すら起らず、一の人語すら聞えず、寂々せき/\寥々れう/\として横はつて居る。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人影じんえいせ違い、呼笛ふえ鳴り、信号手は忙わしく信号旗を引き上げおり、艦首には水兵多くたたずみ、艦橋の上には司令長官、艦長、副長、参謀、諸士官、いずれも口を結び目を据えて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)