乾物かんぶつ)” の例文
「冬ごもりの間は、乾物かんぶつばかり召しあがっておいでだから、こんな青々した木の芽やをさし上げたら、きっとおよろこびになるだろう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ならはせんと思へども然るべき師匠ししやうなきにより江戸兩國りやうごく横山町よこやまちやう三丁目かどにて折廻をりまはし間口奧行拾三間づつ穀物こくもつ乾物かんぶつるゐあきなひ則ち古河の吉右衞門が出店なるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
窓の外は四間ばかりの空地をへだてゝ、乾物かんぶつを積んで置く納屋の二階に面して居りますが、左右の木戸が狹いのと、空地一杯に商賣用のガラクタで、三間梯子などを持ち込めないのは
そこに今朝魚屋が章魚たこを持って来ましたから買っておきました。乾物かんぶつでは干瓢かんぴょう椎茸しいたけもあります。お豆腐は直ぐ近所で買えますし、そんなもののうちで何かとつお料理を教えて下さいませんか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
半襟はんえりを十枚ばかり入れたのが一函ひとはこ昆布こんぶ乾物かんぶつ類が一函、小間物こまものが一函、さまざまの乾菓子ひがしを取りまぜて一函といった工合に積み重ねた高い一聯いちれんの重ね箱に、なお、下駄げたや昆布や乾物等をも加えて
外国人がめなかったなら、あるいは褒めても高い価を払わなかったなら、古い錦絵はとっくの昔し張抜物はりぬきものや、屏風や襖の下張したはり乃至ないし乾物かんぶつの袋にでもなって、今頃は一枚残らずくなってしまったろう。
通りを二丁目ほど来て、それを電車の方角へ曲って真直まっすぐに来ると、乾物かんぶつ屋と麺麭パン屋の間に、古道具を売っているかなり大きな店があった。御米はかつてそこで足の畳み込める食卓を買った記憶がある。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼らの手にかかって、貴き聖餐はミイラか乾物かんぶつとなってしまった。
信長は予告なしに饗応奉行きょうおうぶぎょうの台所屋敷へ臨検りんけんした。このところ安土は照入梅てりにゅうばいのような蒸暑さであったせいか、乾物かんぶつや生魚のにおいがぷんぷんと鼻へ襲った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仙太とガラツ八は二人に案内さして、乾物かんぶつ臭い納屋の二階に登りましたが、勘次郎の殺された部屋とは四間餘りへだてゝ、此處からは鐵砲でなければ、人一人を殺せる道理はありません。
そこまで出ると、かなり賑やかで、角に大きな乾物かんぶつ問屋があった。