久松ひさまつ)” の例文
むか三軒さんげん両隣りやうどなりのおてふ丹次郎たんじらうそめ久松ひさまつよりやけにひねつた「ダンス」の Missミツス B.ビー A.エー Bae.べー 瓦斯ぐわす糸織いとおり綺羅きら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
飛び付くように若い手代、五左衛門の腕にひしとすがります。二十三四の久松ひさまつ型で、主人の娘の危急に取りのぼせたのでしょう。
久松ひさまつ伯から貰った剣を杖づいて志士らしい恰好かっこうをして写した写真が当時の居士を最もよく物語っているものではあるまいか。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
同じ近松半二の作のうち今なお愛好せられているおそめ久松ひさまつの「野崎村」は、なるほど「岡崎」や「沼津」ほど醜悪ではない。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そめ久松ひさまつがお染久松ぢや書けねえもんだから、そら松染情史秋七草しやうせんじやうしあきのななくささ。こんな事は、馬琴大人たいじんの口真似をすれば、そのためしさはに多かりでげす。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
芝居でする久松ひさまつのような美しい小僧は、二十六七になるまで一人寂しく暮している美しい娘と、主従以外の深い親しみをもっていたのではあるまいか。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おやご免なさい。おそめ久松ひさまつ、お品お十夜って、この河岸では評判でしたっけね。そういえばあのお十夜さん、さッぱり影が見えないようだけれど……」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人形はびんつけで髪をっていた。半襟はんえりに梅の模様があるのは、野崎村の久松ひさまつの家に梅の木のあるのをたよりにしたのだからと云うことだった。手は踊りのように自由に動く。
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
三勝さんかつ半七はんしちを描きましてもおそめ久松ひさまつを描きましても、それをかなり隔たった時にして書きまして、すべてに、これは過ぎた昔の事であるという過去と名のついた薄い白いレースか
博士は其時笑つて、そんなら其久松ひさまつを連れてよめに来ればいと云つた事もある。併し事実問題になると、博士は躊躇ちうちよすることを免れない。博士は自ら解して、かう云つてゐる。なに。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「エエ、別に、……アア、そうそう、つまらない事ですけれど、私がかけつけた時、書斎の中から猫が飛び出して来てびっくりしたのを覚えています。久松ひさまつのやつが鉄砲玉の様に飛び出して来ました」
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
駒木根こまきね肥前守かけひ播磨守久松ひさまつ豐前守稻生いなふ下野守御目附には野々山のゝやま市十郎松田勘解由まつだかげゆ徳山とくやま兵衞へゑとう諸御役人しよおんやくにん輝星きらぼしの如く列座れつざせらる此時松平伊豆守殿進出すゝみいでて申されけるは此度天一坊殿關東くわんとう下向げかうに付今日御役人ども御對面ごたいめん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この二人の姿が消えると、芝居で観る久松ひさまつのような丁稚でっちがはいって来た。丁稚は大きい風呂敷包みをおろしてえんに腰をかけた。どこへか使いに行く途中と見える。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(これは久松ひさまつ家及び諸俳人に贈るため)とにかく『ほととぎす』発行に就きては鳴雪翁一番大得意也。翁は一号を見てうれしくてたまらねば即日小家へも来られたるわけ也。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
だからまた当世のことは、とんと御存じなしさ。それが証拠にゃ、昔のことでなけりゃ、書いたというためしはとんとげえせん。おそめ久松ひさまつがお染久松じゃ書けねえもんだから、そら松染情史秋七草しょうせんじょうしあきのななくささ。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ことしの正月の藪入りに出て来た時に、となりの足袋屋のおかみさんが彼を見て、徳ちゃんは芝居に出る久松ひさまつのようだと云ったら、かれは黙って真っ紅な顔をしていた。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこで、お染という名を与えた昔の人の料簡りょうけんは、おそらく恋風と云うような意味で、お染が久松ひさまつに惚れたように、すぐに感染するという謎であるらしく思われた。それならばお染に限らない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)