丹毒たんどく)” の例文
月日は四年を過ぎて、昭和二年の春お妾さんが丹毒たんどくで死のうという間際まぎわに至っても、その生死は依然として不明であった。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「気がついたか? お前は何処どこの何者だ? 風邪かぜひきと、丹毒たんどくといふ熱病だ。大分よくないから入院だ。入院料は一日二円五十銭だがあるかね?」
こほろぎの死 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
病院びょういん小使こづかい看護婦かんごふ、その子供等こどもらなどはみな患者かんじゃ病室びょうしつに一しょ起臥きがして、外科室げかしつには丹毒たんどくえたことはい。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「あるとも。しかし剃刀を持って行く方が宜いよ——彼処あすこ丹毒たんどくが名物だからね。何しろ長い旅行だから僕は持って行くものが多くて仕方がない。鞄二個ではとても間に合いそうもない」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「幸子は種痘から丹毒たんどくになりましたが、漸く片腕一本で生命が助かりました。」
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
全快したのかと喜んでおりましたら、二月の中頃に丹毒たんどくになったといって来ましたので、どうかと思って見まいますと、「もう足の痛みは取れた」といって、座敷の中をずっていました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
病院びやうゐん小使こづかひ看護婦かんごふ子供等抔こどもらなどみな患者くわんじや病室びやうしつに一しよ起臥きぐわして、外科室げくわしつには丹毒たんどくえたことはい。患者等くわんじやら油蟲あぶらむし南京蟲なんきんむしねずみやからてられて、んでゐることも出來できぬと苦情くじやうふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)