不朽ふきゅう)” の例文
そうして一八二三年かれが死ぬまでには、かれの説は不朽ふきゅうのものとしてみとめられ、かれは大満足のうちに、瞑目めいもくしたのであります。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
また一種私欲なきもの生をぬすむを妨げず(文天祥厓山に死せず生を燕獄に偸む四年これあり)、死して不朽ふきゅうの見込あらばいつでも死ぬべし
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
形はないが、文化の流れに、国土のうえに、その仕事や精神を、不朽ふきゅうにのこしている人々の生命力は、過去とはいえ、死滅しないものである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
捨てられた時、別れたのち、自分は初めて恋の味いを知った。平家物語は日本に二ツと見られぬ不朽ふきゅうのエポッペエである。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
……又、ベクリンという画伯は、自分に呼びかける自分の魂の姿を、骸骨がバイオリンを弾いている姿に描きあらわして不朽ふきゅうの名を残したものである。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人間に永遠の児童があり、不朽ふきゅうの母性があることを認めつつも、それを未出の同胞国民とともに、かたりかわすべき用意は整っていると言えるであろうか。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼等には再生の機会は全くなく、要するに彼等は、純然たる霊界居住者なのである。しかながら、彼等がかつちりばめたる宝玉は、歳と共に光輝を加えて、不朽ふきゅうの生命をっている。
あなたがおいででなかったら、先生が果してあの偉大なトルストイと熟された乎、否乎いなか、分かりません。先生が不朽ふきゅうである如く、あなたも不朽です。あなたはかつて自伝を書いて居ると云うお話でした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
またわれわれが『論語』や『聖書』を読み万世不朽ふきゅうの金言と称せらるる教訓にれても、うまいことをいっている、このおしえたれそれに聞かしてやりたいものだと、おのれの身にあてはめて考えるよりは
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
続鉱石集ぞくこうせきしゅう』の下の巻に出ている「阿波国不朽ふきゅう物語」などはその例で、その他にも越中の立山、外南部そとなんぶ宇曾利山うそりざんで、地獄を見たという類の物語も、正直な人が見たと主張するものは
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
伺って、この老骨は、実にほっとしました。この年して初めてほんとの人間と天地の不朽ふきゅうを知ったここちがします。ただいかにせん、自分には乏しい力と才しかありません。お力をかして賜わるか
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
些々ささたる私の見聞もまた不朽ふきゅうのものになった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)