下剃したぞり)” の例文
はじめての室内へ入って来て、櫛箱と、剃刀と、それから、なおよく見給え、ちゃんと下剃したぞりを濡らすためのお湯まで汲みそろえてある。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
手前ことはね、おい、御当所日本橋は人形町通よ、赤煉瓦の学校裏、紋床に役介やっかいになっている下剃したぞりの愛吉てえ、しがねえものよ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町内の海老床の親方、喜八といふ剽輕男へうきんをとこが、下剃したぞりの周吉と一緒に、煤掃すゝはきほどの裝束しやうぞくで、家搜しの一隊に面白さうに手傳つて居るのでした。
一本歯の高足駄を穿いた下剃したぞりの小僧が「すしじゃいやだ、幽霊を見せてくれたら、積んで見せらあ」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下剃したぞり一人ひとりをおいてられたのでは、家業かぎょうさわるとおもったのであろう。一張羅ちょうら羽織はおりを、渋々しぶしぶ箪笥たんすからしてたおはなは、亭主ていしゅ伝吉でんきちそでをおさえて、無理むりにも引止ひきとめようとかおのぞんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
仁吉はもう、びんだらいの湯を代えて、下剃したぞりから剃刀かみそりをうけながら
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
附け廻してゐた浪人者の織部鐵之助か、上總屋の番頭の金五郎か、大工の若吉か下剃したぞりの幾松が怪しいつて言ふが——
店を、下剃したぞりの松にまかせて、仁吉は、独りで二階に上がっていた。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
付け廻していた浪人者の織部鉄之助か、上総屋かずさやの番頭の金五郎か、大工の若吉か下剃したぞりの幾松が怪しいって言うが——
下剃したぞりが、腰の掛け場を片づけて
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町内の騷ぎは一應納まりましたが、まださすがに床屋へ來るほどの暇人もなく、平次が海老床へ入つた時は、親方の喜八は下剃したぞりの周吉を相手に、人待顏に煙草にして居るところでした。
それを見て飛込んで來た下剃したぞりの周吉、三人三つ巴になつて爭ふ中へ