三国志さんごくし)” の例文
長屋門ながやもん這入はいると鼠色ねずみいろ騾馬らばが木の株につないである。余はこの騾馬を見るや否や、三国志さんごくしを思い出した。何だか玄徳げんとくの乗った馬に似ている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すなわち、「真田三代記さなださんだいき」、「漢楚軍談かんそぐんだん」、「三国志さんごくし」といったような人間味の希薄なものを読みふけったのであった。
科学と文学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして学校では実物を完全に離れた文字だけの理科をおそわり、家へ帰っては『三国志さんごくし』と『西遊記さいゆうき』とにっていた。
簪を挿した蛇 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
また普通の凧の絵は、達磨、月浪つきなみ童子格子どうじごうし、日の出に鶴、雲龍うんりゅう玉取龍たまとりりゅうこい滝上たきのぼり、山姥やまんばに金太郎、あるいは『三国志さんごくし』や『水滸伝すいこでん』の人物などのものがある。
凧の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
高い窓から光線が横に這入はいって来るのは仕方がないが、その窓にめてある障子しょうじは、北斎ほくさいいた絵入の三国志さんごくしに出てくるようなからめいたものである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
漢楚軍談かんそぐんだん」「三国志さんごくし」「真田三代記さなださんだいき」の愛読者であったところの明治二十年ごろの田舎いなかの子供にこのライネケフックスのおとぎ話はけだし天啓の稲妻であった。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三国志さんごくしなどを引っぱり出し、おなじみの信乃しの道節どうせつ孔明こうめい関羽かんうに親しむ。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
穂の短かいさきに毛の下がった三国志さんごくしにでも出そうな槍をもつ。そのビーフ・イーターの一人が余のうしろに止まった。彼はあまりの高くない、ふとじし白髯しろひげの多いビーフ・イーターであった。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)