三個みつ)” の例文
市郎は医師の手当てあてよって、幸いに蘇生したので、すぐふもとき去られていたが、安行とお杉と𤢖との三個みつの屍体は、まだ其儘そのままに枕をならべていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
虎の皮には弱ったと見えて、火の車を飛ばした三個みつの鬼が、腰に何やらん襤褸ぼろまとっていた、は窮している。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これでず屍体の収容は済んだ。三個みつの亡骸を窟の外へき出して明るい所で検視を行うと、安行の屍体には何等負傷の痕も無く、その顔は依然として安らかに眠っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その夫何某なにがし智慧ちえある人にて、欺きて蛇に約し、なんじ巨鷲おおわしの頭三個みつを得て、それを我に渡しなば、妻をやらむとこたえしに、蛇はこれをうべないて鷲と戦い亡失ほろびうせしということの候なり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査の決心と勇気とに励まされ、これに又幾分の好奇心もまじって、数名の若者は其後そのあとに続いた。七兵衛等はあとに残って、生死しょうし不分明ふぶんみょうの市郎と三個みつの屍体とを厳重に守っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と、唄うに連れて、囃子に連れて、少しずつ手足のしなした、三個みつのこの山伏が、腰を入れ、肩をめ、首を振って、踊出す。太刀、斧、弓矢に似もつかず、手足のこなしは、しなやかなものである。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
必らずしも雨霰の如くに小歇おやなくバラバラ降るのではなく何処いずくよりとも知らず時々にバラリバラリと三個みつ四個よつ飛び落ちて霎時しばらくみ、また少しく時を経て思い出したようにバラリバラリと落ちる。
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)