一羽いちわ)” の例文
一言ひとことも物を言いませんでした。画家は口笛くちぶえを吹きました。ナイチンゲールが歌いはじめました。一羽いちわまた一羽と、だんだん高く。
元気なすずめ一羽いちわ、少し先の、半ば割れた赤煉瓦あかれんがの上に止って、絶えず全身をくるくる回し、をひろげて、かんにさわる鳴き声を立てていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ところへ、はるか虚空こくうから大鳶おほとび一羽いちわ、矢のやうにおろいて来て、すかりと大蛇おおへび引抓ひきつかんで飛ばうとすると、這奴しゃつ地所持じしょもち一廉いっかどのぬしと見えて、やゝ、其の手ははぬ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
僅か二三間先きに、枯葦かれあしの茂みを抜いて立っているくいがあって、それに鴉が一羽いちわ止まっている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一羽いちわかり
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、その枝に、一羽いちわのナイチンゲールが住んでいました。その歌声は、ほんとうにすばらしいものでした。
岡田はこの時又新しい事実を発見した。それは鳥が一羽いちわではないと云う事である。羽ばたきをして逃げ廻っている鳥の外に、同じ羽色の鳥が今一羽もう蛇にくわえられている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたしがすわっていると、頭の上の、すっかり暗くなったしげみの中で、小鳥が一羽いちわしきりにかさこそいわせていた。灰色の小猫こねこが、背中をまっすぐばして、そっと庭へしのんだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
一羽いちわでとぶか、とそでをしめ、えりを合わせた。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見ると、めんどりが一羽いちわ、十一羽のひなどりたちといっしょにていました。ところが、そのまわりを、ひとりのきれいな女の子が、はねまわっているのです。
出が王様の城だから、姫君の鸚鵡おうむ一羽いちわ
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ポルトガルから、一羽いちわのアヒルがやってきました。もっとも、スペインからきたんだ、という人もありましたがね。でも、そんなことは、どっちでもいいのです。
けれども、その雲よりもずっとずっと速く、ハクチョウの一むれが、長い白いベールのように、一羽いちわ、また一羽と、波の上を、今しずもうとしているお日さまのほうにむかって飛んでいきました。
その中の一羽いちわつばさの力がおとろえて、だんだん下へしずんで行きました。
「おそろしい話なのよ!」と、一羽いちわのメンドリが言いました。