一人言ひとりごと)” の例文
ふと眼が会ったら、その男が半分は一人言ひとりごとのように、半分は私に話しかけるような調子で「戦争にけりゃあこんなもんだ。仕方がないや」
硝子を破る者 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
と伊作が橋を渡りながら、一人言ひとりごとのようにいうと、ほかの二人も高い声で
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
本當ほんとう女房にようぼうもちにつては仕方しかたがないねとみせむかつてしきいをまたぎながら一人言ひとりごとをいへば、たかちやん大分だいぶ御述懷ごじつくわいだね、なにもそんなにあんじるにもおよぶまい燒棒杌やけぼつくいなにとやら、またよりのもどこともあるよ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あげ何ゆゑに泣とは餘りに心なき仰かな只今たゞいま良人あなたがお一人言ひとりごときくに付ても今の身のうへなさけない共しかないとも思へば/\口惜くちをしさぞ御無念に思召さん如何に物堅き御氣象ごきしやうとて日々の困窮こんきうの其中に二十五兩と云ふ此金の眼前がんぜんりながら御歸しなさるとの御志ざしは武士道の義理一おう御道理ごもつともなれ共市之丞殿が昔の恩義おんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本当に女房もちに成つては仕方がないねと店に向つてしきいをまたぎながら一人言ひとりごとをいへば、たかちやん大分だいぶ御述懐ごじつかいだね、何もそんなに案じるにも及ぶまい焼棒杭やけぼつくいなにとやら、又よりの戻る事もあるよ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)