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わがこゝろ
置ては
別莊守りの
夫婦のみなれど
最愛の
娘病氣との
事なり
本宅よりの
使ひ
絶ま
無ければ
事によそへて
杉原のこと
問はするに
本宅にも
此頃さらに
參り
給はずといふ
左るにても
何とし
給ひしにや
我心を
昨日までは
經廻る
旅路の
幾千
里、
憂き
時も
樂しき
時も
語らふ
人とては
一人もなく、
晨に
明星の
清しき
光を
望み、
夕に
晩照の
華美なる
景色を
眺むるにも
只一人、
吾と
吾心を
慰むるのみであつたが