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やじらう
諸君聞かずや、むかし
彌次郎と
喜多八が、さもしい
旅に、
今くひし
蕎麥は
富士ほど
山盛にすこし
心も
浮島がはら。
其の
山もりに
大根おろし。
彌次郎が
其の
時代には
夢にも
室氣枕の
事などは
思ふまい、と
其處等を
眗すと、
又一人々々が、
風船を
頭に
括つて、ふはり/\と
浮いて
居る
形もある。
女、
彌次郎が
床の
上にあがり、
横になつて、
此處へ
來いと、
手招ぎをして
彌次郎をひやかす、
彌次郎ひとり
氣を
揉み
なまじ
所帶持だなぞと
思ふから
慾が
出ます。かの
彌次郎の
詠める……
可いかい——
飯もまだ
食はず、ぬまずを
打過ぎてひもじき
原の
宿につきけりと、もう——
追つつけ
沼津だ。