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ほうなふ
溢れる水に
濡れた
御手洗の石が
飜へる
奉納の
手拭のかげにもう
何となく
冷いやうに思はれた。
其れにも
拘らず
朝参りの男女は本堂の階段を
上る前に
何れも手を洗ふ
為めにと
立止まる。
近江屋「なに、それはもつと小さい丸いので、ぶら
提灯といふのだが、あれは
神前へ
奉納するので、
周囲を
朱で
塗り
潰して、
中へ
墨で「
魚がし」と書いてあるのだ、
周囲は
真ツ
赤中は
真ツ
黒。
あの
額の
中には『
奉納』といふ
文字と、それを
進げた
人の
生れた
年なぞが
書いてあるのに
氣がつきましたか。
父さんのお
家の
裏に
祀つてあるお
稻荷さまの
社にも、あの
繪馬がいくつも
掛つて
居ました。