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ぞくじん
「いや、結構だ。遠く
俗塵を離れて天然の
妙致に心気を洗う。その心がけがたのもしいぞ」
それより上は全くの
神斧鬼鑿の
蘇川峡となるのだ。彩雲閣から
僅に五、六丁足らずで、早くも
人寰を離れ、
俗塵の濁りを留めないところ、
峻峭相連なって
少からず目をそばだたしめる。
駆け
出す
途端に
鼻緒が
切れて、
草履をさげたまま
駆け
出す
小僧や、
石に
躓いてもんどり
打って
倒れる
職人。さては
近所の
生臭坊主が、
俗人そこのけに
目尻をさげて
追いすがるていたらく。
俗人を
教ふる
功徳の
甚深広大にしてしかも其
勢力の
強盛宏偉なるは
熊肝宝丹の
販路広きをもて
知らる。
洞簫の
声は
嚠喨として
蘇子の
膓を
断りたれど
終にトテンチンツトンの
上調子仇つぽきに
如かず。