俗塵ぞくじん)” の例文
大仙は、ここにはおいでございませぬ。ここの俗塵ぞくじんすら嫌って、これよりさらに山ふかく、龍虎山のいただきも尽きるところに、一宇の草院を
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸数は三十有余にて、住民ほとんど四五十なるが、いずれも俗塵ぞくじんいといて遯世とんせいしたるが集りて、悠々閑日月を送るなり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、結構だ。遠く俗塵ぞくじんを離れて天然の妙致みょうちに心気を洗う。その心がけがたのもしいぞ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それより上は全くの神斧鬼鑿しんぷきさく蘇川そせん峡となるのだ。彩雲閣からわずかに五、六丁足らずで、早くも人寰じんかんを離れ、俗塵ぞくじんの濁りを留めないところ、峻峭しゅんしょう相連あいつらなってすくなからず目をそばだたしめる。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
と、当時、新宿北町に結んだ草庵円通堂に閉じこもり、禅三昧に俗塵ぞくじんを避けた。
円朝花火 (新字新仮名) / 正岡容(著)
その時の愉快は今思い出しても心中の俗塵ぞくじんを洗い去るの感がございます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
極めて平凡な一田夫として俗塵ぞくじんに埋もれた。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)