“おびただし”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
60.0%
夥多40.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
が、地方としては、これまで経歴へめぐったそこかしこより、観光に価値あたいする名所がおびただしい、と聞いて、中二日ばかりの休暇やすみを、紫玉はこの土地に居残った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よはひはなほ六十に遠けれど、かしらおびただし白髪しらがにて、長く生ひたるひげなども六分は白く、かたちせたれどいまだ老のおとろへも見えず、眉目温厚びもくおんこうにしてすこぶ古井こせい波無きの風あり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この月二十日の修善寺の、あの大師講の時ですがね、——お宅のそば虎渓橋こけいばし正面の寺の石段の真中まんなかへ——夥多おびただし参詣さんけいだから、上下うえした仕切しきりがつきましょう。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
唯有とある横町を西に切れて、なにがしの神社の石の玉垣たまがきに沿ひて、だらだらとのぼる道狭く、しげき木立に南をふさがれて、残れる雪の夥多おびただしきが泥交どろまじりに踏散されたるを、くだんの車は曳々えいえい挽上ひきあげて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ところが、大漁といううちにも、その時は、また夥多おびただしく鰯があがりました。獅子浜在の、良介に次吉じきちという親子が、気を替えて、烏賊釣いかつりに沖へ出ました。暗夜やみの晩で。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)