おびただし)” の例文
さらぬだに燃ゆるばかりなる満開の石榴ざくろに四時過の西日のおびただしく輝けるを、彼はわづらはしと目を移して更に梧桐ごどうすずしき広葉を眺めたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、地方としては、これまで経歴へめぐつた其処彼処そこかしこより、観光に価値あたいする名所がおびただしい、と聞いて、中二日なかふつかばかりの休暇やすみを、紫玉は此の土地に居残いのこつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、地方としては、これまで経歴へめぐったそこかしこより、観光に価値あたいする名所がおびただしい、と聞いて、中二日ばかりの休暇やすみを、紫玉はこの土地に居残った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よはひはなほ六十に遠けれど、かしらおびただし白髪しらがにて、長く生ひたるひげなども六分は白く、かたちせたれどいまだ老のおとろへも見えず、眉目温厚びもくおんこうにしてすこぶ古井こせい波無きの風あり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かかることありし翌日はおびただしく脳のつかるるとともに、心乱れ動きて、そのいかりしのちを憤り、悲みし後を悲まざればまず、為に必ず一日の勤を廃するは彼の病なりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)