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うすぎり
此の
裏は、すぐ
四谷見附の
火の
見櫓を
見透すのだが、
其の
遠く
廣いあたりは、
日が
眩いのと、
樹木に
薄霧が
掛つたのに
紛れて、
凡そ、どのくらゐまで
飛ぶか、
伸すか、そのほどは
計られない。
面の
長さは三
尺ばかり、
頤の
痩た
眉間尺の
大額、ぬつと
出て、
薄霧に
包まれた
不氣味なのは、よく
見ると、
軒に
打つた
秋祭の
提灯で、一
軒取込むのを
忘れたのであらう、
寂寞した
侍町に
唯一箇。
薄霧の
袖の
光りを
長く
敷いた。