色彩しきさい)” の例文
小倉嘉門の後家の家は、谷口金五郎の家とよく似ては居りますが、それよりは更に贅澤で、いくらか女世帶らしい色彩しきさいがあります。
代助は立ちながら、画巻物ゑまきもの展開てんかいした様な、横長よこなが色彩しきさいを眺めてゐたが、どう云ふものか、此前このまへて見た時よりは、いたく見劣りがする。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただ花の器官に大小広狭こうきょう、ならびに色彩しきさいの違いがあるばかりだ。すなわち最外さいがいの大きな三ぺん萼片がくへんで、次にあるせまき三片が花弁かべんである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
見わたすと、その檸檬の色彩しきさいはガチヤガチヤした色の階調をひつそりと紡錘形の身體の中へ吸收してしまつて、カーンとえかへつてゐた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
すると、色とりどりのはなやかさがにうつりました。ゆかから天井てんじょうまで、まばゆいほどの色彩しきさいと金めっきをほどこした絵がかかっていました。
そのから、このはな生活せいかつは、一ぺんしたのでした。花壇かだんには、あかや、や、むらさきや、しろや、さまざまな色彩しきさいはなが、いっぱいにいていました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
唯、金環蝕が終ってようのはじまるときに生をうけた子供が、五月の微風びふうにそよぐ若葉の色彩しきさいの中に、すくすくと伸びてゆくことをいのるのみである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
すべての色彩しきさいと形が水中へ入れば一律に化生せしめられるように人間のモラルもここでは揮発性と操持性とを失った。いわば善悪が融着ゆうちゃくしてしまった世界である。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あゝ汝はアゴッビオのほまれ巴里パリージにて色彩しきさいとなへらるゝわざの譽なるオデリジならずや。 七九—八一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あんずるに春琴の稽古振りが鞭撻のいきを通りして往々意地の悪い折檻せっかんに発展し嗜虐しぎゃく色彩しきさいをまで帯びるに至ったのは幾分か名人意識も手伝っていたのであろうすなわちそれを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さらにくすんだあかけやきこずゑにも微妙びめう色彩しきさい發揮はつきせしめて、ことあひだまじつたもみぢ大樹たいじゆこれえないこずゑ全力ぜんりよく傾注けいちゆうしておどろくべき莊嚴さうごん鮮麗せんれいひかり放射はうしやせしめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
われらはげしき大都会だいとくわい色彩しきさいながむるもの、奥州辺おうしうへん物語ものがたりみ、婦人ふじん想像さうざうするに、大方おほかた安達あだちはら婆々ばゞおもひ、もつぺ穿きたるあねえをおもひ、こんふんどし媽々かゝあをおもふ。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
堺は当時の開港場かいこうじょうだったので、ものめずらしい異国いこく色彩しきさいがあふれていた。からや、呂宋ルソンや、南蛮なんばんの器物、織物などを、見たりもとめたりするのも、ぜひここでなければならなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
畫題ぐわだいといひ色彩しきさいといひ、自分じぶんのはえうするに少年せうねんいたぐわ志村しむらのは本物ほんものである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
と、をつとは四五けんむかうにつてゐる子供こどもはういろどりしたゴムまりげた。が、夏繪なつゑ息込いきごんでゐたのがまたもりそこねて、まり色彩しきさいをどらしながらうしろの樹蔭こかげへころがつてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その色彩しきさいの豊かさは、興国塾の塾生たちの眼を見張らせるのに十分であった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いろいろな服装や色彩しきさいが、処々ところどころに配置された橙や青の盛花もりばなと入りまじり、秋の空気はすきとおって水のよう、信者たちもまたさっきとは打って変って、しいんとして式の始まるのを待っていました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
梯子はしごやう細長ほそながわくかみつたり、ペンキぬりの一枚板まいいた模樣畫もやうぐわやう色彩しきさいほどこしたりしてある。宗助そうすけはそれを一々いち/\んだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このごろ、をかいてみたいというがおこったので、こうしているも、ものものとの関係かんけいや、光線こうせん色彩しきさいなどを、注意ちゅういするようになりました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
娘らしく何んとなくなまめかしい色彩しきさいと、ほのかな匂ひはたゞよひますが、調度は至つて粗末で、押入から引出した荷物の中にも、ろくな着物がありません。
けれども、それは木でこしらえてあって、それに色彩しきさいをほどこし、金めっきをしたものなのです。そしてそれは、壁に打ちこまれた一本の木釘きくぎで、しっかりととめられています。
……一人ひとり二人ふたりはあつたらうが、場所ばしよひろいし、ほとんかげもないから寂寞ひつそりしてた。つた手許てもとをスツとくゞつて、まへへ、おそらくはなならぶくらゐにあざやかな色彩しきさいせたむしがある。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
健康けんこうひと世界せかいと、病人びょうにん世界せかいと、もし二つの世界せかいべつであるなら、それをつつ空気くうき気分きぶん色彩しきさいが、またことなっているでありましょう。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
動機どうきは、たんに哲学上の好奇心からこともあるし、又世間せけんの現象が、あまりに複雑ふくざつ色彩しきさいを以て、かれあたまを染めけやうとあせるからる事もあるし
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いづれも天竺てんぢくの名木で作つたものでせう、色彩しきさい剥落はくらくしてまことに慘憺さんたんたる有樣ですが、男女二體の彫像てうざうの内、男體の額にちりばめた夜光の珠は燦然さんぜんとして方丈はうぢやうの堂内を睨むのでした。
彼女かのじょらの、このまちってしまうということは、たのしみと色彩しきさいとぼしいこのあたりの人々ひとびとに、なんとなくさびしいことにかんじられたのであります。
初夏の空で笑う女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
せま京都きやうときた宗助そうすけは、單調たんてう生活せいくわつやぶ色彩しきさいとして、さう出來事できごとも百ねんに一ぐらゐ必要ひつえうだらうとまでおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また最初さいしよから、色彩しきさいうすきはめて通俗つうぞく人間にんげんが、習慣的しふくわんてき夫婦ふうふ關係くわんけいむすぶためにつたやうにもえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とりはねうつくしく、ちょうどうつくしい織物おりものか、またいろどられたるようにはなやかであったけれど、からすはくろで、そのからだにはめずらしい、うつくしい、色彩しきさいもついていませんでした。
からすの唄うたい (新字新仮名) / 小川未明(著)
これと云ふ程の大した装飾もなかつた。彼に云はせると、がくさへ気のいたものは掛けてなかつた。色彩しきさいとしてく程にうつくしいのは、本棚に並べてある洋書に集められたと云ふ位であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にこやかにわらっていました。からだには、あかむらさききんぎん、あらゆるまばゆいほどのはなやかな色彩しきさいられた着物きものをまとっていました。かみは、ながく、黄金色こがねいろなみのようにまきがっていました。
山の上の木と雲の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)