)” の例文
旧字:
きゲートルをして、地下足袋じかたびをはいて、くろ帽子ぼうしかぶっていました。小泉こいずみくんは、ほかへをとられて、ぼくづきませんでした。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
朝霧あさぎりがうすらいでくる。庭のえんじゅからかすかに日光がもれる。主人しゅじんきたばこをくゆらしながら、障子しょうじをあけはなして庭をながめている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
王子は石を一つひろって、それを力まかせにげてみました。石ははるか下の方のくもきこまれたまま、なんのひびきもかえしませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
つづいて新吉しんきちがファットマンの鼻へ乗ろうとすると、ファットマンはちょっと鼻をきこんで、しばらく新吉の顔を見ていました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
やがて思いついたことがあって、わたしはそれをまるいてネクタイにした。大将たいしょうがもっとわらった。カピがまたでんぐり返しを打った。
かごを取りいた連中は、サンドヰツチをした。すこしのあひだは静であつたが、思ひした様に与次郎が又広田先生に話しかけた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
俄盲目にはかめくらかんるいけれども、もらつた手拭てぬぐひきず二重ふたへばかりいて、ギユツとかためますと、くすり効能かうのう疼痛いたみがバツタリ止まりました。
といひかけてつツち、つか/\と足早あしばや土間どまりた、あまのこなしが活溌くわツぱつであつたので、拍手ひやうし黒髪くろかみさきいたまゝうなぢくづれた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まん中の大きなかまからは湯気ゆげさかんにたち、農夫たちはもう食事しょくじもすんで、脚絆きゃはんいたり藁沓わらぐつをはいたり、はたらきに出る支度したくをしていました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
行田印刷所と書いたインキに汚れた大きい招牌かんばんがかかっていて、旧式な手刷りが一台、例の大きなハネをかえし繰り返し動いているのが見える。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
頭から顔じゅうをほうたいでぐるぐるき、ほうたいの白い中からはなだけが赤くのぞいていて、そのぶきみさは、全身ぜんしんの毛がそうけ立つほどだった。
「お早いのには、呂宋兵衛もしたきましたよ。さすがは、伊賀者頭いがものがしらでお扶持ふちをもらっているだけのお値打ねうちはある」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
波止場に入りし時、翁は夢みるごときまなざしして問屋といや燈火ともしび、影長く水にゆらぐを見たり。舟つなぎおわれば臥席ござきてわきに抱き櫓を肩にして岸にのぼりぬ。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
むらものおおぜいはちをかぶったむすめいて、がやがやさわいでいるところをとおくからをおつけになって
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こうって、魔女まじょはラプンツェルのうつくしいかみつかんで、ひだりへぐるぐるときつけ、みぎ剪刀はさみって、ジョキリ、ジョキリ、とって、その見事みごと辮髪べんぱつ
わたししたきました、なか/\批評ひゝやうどころではない、敬服けいふくしてしまつたのです、そこで考へた、かれが二ねんおくれて予備門よびもんに入つて来たのは、意味いみ無くして遅々ぐづ/\してたのではない
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
春重はるしげから、無造作むぞうさされたくろな一たばは、まつろうひざしたで、へびのようにひとうねりうねると、ぐさりとそのままたたみうえへ、とぐろをいておさまってしまった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
花中かちゅうには四雄蕊ゆうずいがある。その長いやくは、葯胞やくほうへんがもとから上の方にき上がって、黄色の花粉を出している特状がある。このようなやくを、植物学上では片裂葯へんれつやくと称している。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
大波おおなみは見るまに、たちまちひめきこんでしまいました。するとそれといっしょに、今まで荒れ狂っていた海が、ふいにぱったりと静まって、急におだやかななぎになってきました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
蜥蜴の体は最早トラの胃の中にあるに、切れて落ちた鋼鉄色こうてついろの尾の一片は、小さな一疋の虫かなんぞの様にぐるっといたりほどけたりして居る。トラめは其れも鵜呑うのみにして了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼の身体は、いま針金でぐるぐるきにされている。なんだか一向わからない。
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、せまい谷間たにまに落ちこみ、そこの岩にあたって、しぶきをあげて飛びちっています。たきの下の、水がものすごくうずいてあわをたてているところに、岩が二つ三つきでています。
青白い二本の手を突込んで中のものを放り出し初めた……縮緬ちりめんの夜具、緞子どんすの敷布団、麻のシーツ、派手なお召のき、美事な朱総しゅぶさのついたくくまくらと塗り枕、墨絵を描いた白地の蚊帳……。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
帯ときまえのしだらないおのが姿。ひらいた襟のあたりの白い膚にくいいるがごとき門之丞の視線を知った萩乃は、手早く拾った帯のはしをきなおし、挟みこんで、ソソクサと胸かきあわせながら
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
富士男は声をたよりにきろくろとみよしのあいだにあゆみよった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
くろなやみ旋律せんりつうづき起る。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しばらくすると、ほおかぶりをして、えりきをした百しょうが、そのはしうえとおりかかりながらかれりをしているのをながめました
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
雨でもると、わたしたちは船室の中にはいって、いきおいよくえた火を取りいてすわる。病人の子どもがかぜをひかないためであった。
手紙てがみなかき込めて、二百円の小切手が這入はいつてゐた。代助は、しばらく、それをながめてゐるうちに、梅子うめこまない様な気がしてた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あの下流かりゅうの赤いはたの立っているところに、いつもうでに赤いきれをきつけて、はだかに半天はんてんだけ一まいてみんなの泳ぐのを見ている三十ばかりの男が
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あとにをんな亭主ていしゆかへつてたならばませようと思つて買つて置いた酒をお客にましてしまつたのですから、買つて置かうと糸立いとだていて手拭てぬぐひかむ
負惜まけをしみをつたものゝ、家来けらいどもとかほ見合みあはせて、したいたも道理だうりあぶみ真中まんなかのシツペイのためにくぼんでた——とふのが講釈かうしやくぶんである。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
別室にうつって、福島正則ふくしままさのりの手から密書みっしょをうけ取った秀吉ひでよしは、一読して、すぐグルグルとむぞうさにきながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてそばるが早いか、その大きな身体からだで、ぐるぐると人形にきついて、力いっぱいにしめつけました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
阿倍あべいえむかしからつたわって、だれももののなかった天文てんもん数学すうがくものから、うらないや医学いがくほんまで、なんということなしにみなんでしまって、もう十三のとしには
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おこのがひるといわず夜といわず、ひそかににらんだとどのつまりは、ひとり四畳半じょうはん立籠たてこもって、おせんのかたにうきをやつす、良人おっとむねきつけたおびが、春信はるのぶえがくところの
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
村の銀行ぎんこう金庫きんこからも、ちょうど片手かたてでつかめるほどの金貨きんかと、紙できちんといた貨幣かへいとが、ふいに空中くうちゅういあがり、おどろく行員こういんをしりに、ふわふわとんで銀行ぎんこうをでてゆき
命はその相模さがみ半島はんとうをおたちになって、お船で上総かずさへ向かっておわたりになろうとしました。すると途中で、そこの海の神がふいに大波おおなみきあげて、海一面を大荒おおあれに荒れさせました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
土間を正面に見た旦那座だんなざに座っているのが鬼の大将たいしょうであろう。こしのまわりにけものの皮をいて大あぐらをかいている。口の両端りょうはしからあらわれているきばが炎にらされて金の牙のように光っている。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そこで継母ままははは、自分じぶん居室いまにある箪笥たんすのところにって、手近てぢか抽斗ひきだしから、しろ手巾はんけちしてて、あたまくび密着くっつけたうえを、ぐるぐるといて、きずわからないようにし、そして林檎りんごたせて
あとから、かみなりおといかけるようにきこえたのです。ふりくと、もはや野原のはらのかなたは、うず黒雲くろくものうちにつつまれていました。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だれももうわらう者はなかった。空がだんだん暗くなった。あらしがどんどん来かけていた。すなけむりがうずをいて上がった。
あに洋卓てえぶるうへの手紙をつて自分でき始めた。しづかな部屋のなかに、半切はんきれおとがかさ/\つた。あにはそれをもとごとくに封筒に納めて懐中した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
蚕婆かいこばばあが毒づきながら、縄のまま半助をひきずってきて、いえの前のかきの木へグルグルきにしばってしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
へい、芝居茶屋しばゐぢややの若いしゆさんのお世辞せじだよ、うむ、其方そのはうからう、エヽ此手このてでは如何いかゞでございます。と機械きかいへ手をかけてギイツとくとなかから世辞せじ飛出とびだしました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そしてそれっきりなみはもうべつのことばで何べんもいて来てはすなをたててさびしくにごり、砂をなめらかなかがみのようにして引いて行っては一きれの海藻かいそうをただよわせたのです。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どうかしてかたきちたいとおもいますが、何分なにぶんこうは三上山みかみやま七巻ななまはんくというおおむかでのことでございますから、よしかって行っても見込みこみがございません。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ると、……むら/\と一巻ひとまきうづくやうにつて、湯気ゆげが、なべなかから、もうつ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にわには木も石もなく、ただたいらな地面じめんが高いかべに取りかれてるきりでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして、あっというに、国じゅうを半分までもんでしまいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)