しろ)” の例文
しかし、よるになると、こっそりとはじめて、あさしろもんがあくまでうつしました。かおははれぼったくなり、病人びょうにんのようにみえました。
ネコはネコで、灰色ネズミがそんなにたくさんおしろに押し入ってくれば、きっとじぶんもかみ殺されるだろう、と思いこんでいます。
さきには、きたしょうめて、一きょ柴田勝家しばたかついえ領地りょうち攻略こうりゃくし、加賀かがへ進出しては尾山おやましろに、前田利家まえだとしいえめいをむすんで味方みかたにつけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、漁師りょうしはひきかえして、家へかえろうと思いました。ところが、もどってみますと、そこには大きな石のおしろがそびえています。
味方を見た朝月は、いきなり気絶きぜつした清兵衛のよろいどうをくわえ、明兵みんぺいをけちらして、まっしぐらに、しろの門へとかけこんでいった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
さしわたし三間ばかりにめぐらしたる高さ六七尺のまろき壇を雪にて作り、これに二処ふたところの上りだんを作る、これも雪にてする、里俗りぞくよんしろといふ。
天守てんしゆしたへもあなとほつて、おしろ抜道ぬけみちぢや不思議ふしぎぬまでの、……わし祖父殿おんぢいどん手細工てざいくふねで、殿様とのさまめかけいたとつけ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしてそのてんでんのくににいかめしいおしろをかまえて、すこしでも領分りょうぶんをひろめようというので、お隣同士となりどうし始終しじゅう戦争せんそうばかりしあっていました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
宇陀うだしろにしぎなわをかけて待っていたら、しぎはかからないで大くじらがかかり、わなはめちゃめちゃにこわれた。ははは、おかしや」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
しろまつかげきそうな、日本橋にほんばしからきたわずかに十ちょう江戸えどのまんなかに、かくもひなびた住居すまいがあろうかと、道往みちゆひとのささやきかわ白壁町しろかべちょう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
神州を守るくろがねのうきしろは、へさきに白く波をけり、わが無敵の『富士』は、翼をひろげて、凱旋の羽ばたきをするのである。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
いっそ、自分じぶんからこのしろってしまいたいなどとおもって、毎日まいにちまどぎわにってとおく、あてなくながめていられました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そら、ばけものはチブスになってぬだろう。そこでぼくはでてきてあんずのおひめさまをつれておしろかえるんだ。そしておひめさまをもらうんだよ。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見ると、自分はしろにわ芝生しばふの上にころんでるのでした。からだ中あせぐっしょりになってむねが高く動悸どうきしていました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
『おしろもとうとうちてしまった……最早もはや良人おっともこのひとではない……にくッくきてき……おんなながらもこのうらみは……。』
「殿様、わかりました。お家の名刀はたしかに、おしろのうらのいちばん大きなまつの根元にうずめてございます。」
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
この川はたいそうきれいな川で西岸には古いおしろがあったり葡萄ぶどうの畑があったりして、川ぞいにはおりしも夏ですからあしが青々とすずしくしげっていました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
わたしが汽車からとび下りて、押送おうそう巡査じゅんさの手からのがれて船に乗った、あの海岸から西へ二十里(約八十キロ)へだたった所に、わたしの美しいしろはあった。
さて、アラジンの住んでいる町にあるおしろの王さまのおひめさまは、大へん美しい方だということでした。
小田原をだはらいて何時いつかんずるのは、自分じぶんもどうせ地上ちじやうむならば此處こゝみたいといふことである。ふるしろたかやまてんらなる大洋たいやう樹木じゆもくしげつてる。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
親爺おやぢの云ふ所によると、かれと同時代の少年は、胆力修養のめ、夜半やはん結束けつそくして、たつた一人ひとり、御しろきた一里にあるつるぎみね天頂てつぺんのぼつて、其所そこの辻堂で夜明よあかしをして
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また日本につぽん島國しまぐにであつて、外國人がいこくじんからめられるといふ心配しんぱいもありませんでしたから、しろきづ必要ひつようすくなくなかつたので、さうした種類しゆるい遺蹟いせきもたくさんはありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「おい、君は『しろ同人どうじんの音楽会の切符を売りつけられたか。」と真顔まがおになって問いかけた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
つきかゞやいてゐるそらひゞくおしろ太鼓たいこ。それは、もう門限もんげんだといふらせなのです。だがまうしばらく、つのをつてくれとかんじるのは、現在げんざい心持こゝろもちのなくなるのをしむこゝろなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
さういふいはいしおほたうげうへ出來できたおしろのやうなむらですから、まるで梯子段はしごだんうへにおうちがあるやうに、石垣いしがきをきづいては一けんづゝおうちてゝありました。どちらをいてもさかばかりでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「よろしい。此処ここで取押へたやつしろいて行け。あとでしらべるから」
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「お雪さん、きょうはひとつおにしろを見物に行こうじゃありませんか」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一 高きところしろと申し、ひくき処は城下しょうかと申す也
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
柳絮飛時花満城 柳絮りゅうじょの飛ぶ時 はな しろ
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しろもんまできはきたが
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
とりでしろつきあげて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
とう/\しろ立歸たちかへ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
むすめはこういって、ヨハネスの手をとり、おしろのなかへ案内あんないしていきました。このむすめは、王女のおつきの侍女じじょだったのです。
大きなおしろがそびえ立ち、ひくかべはなにかこまれた中庭には、美しく石がしきつめてあって、古風こふう庭園ていえんはいかにも優雅ゆうがです。
さしわたし三間ばかりにめぐらしたる高さ六七尺のまろき壇を雪にて作り、これに二処ふたところの上りだんを作る、これも雪にてする、里俗りぞくよんしろといふ。
「それではまるで、他人がこのしろきずいてくれるようなものだ。なぜだ? なぜそんなにして秀吉の住居すまいをみんなしてつくってくれるのか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といいいい、てんでんのおしろてこもって、為朝ためともめてたら、あべこべにたたきせてやろうとちかまえていました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しろがどうやらできあがったころ、明軍みんぐん十四まんの大兵が京城けいじょう到着とうちゃくし、この蔚山城うるさんじょうをひともみに、もみ落とそうと軍議していることがわかった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
そこで、幕府ばくふは、品川しながわのおきに、砲台ほうだい大砲たいほうをすえたじん)をつくって、江戸えど(いまの東京とうきょう)のしろをまもろうとしました。
しろうちは、いくらひろくても、一にちうちには、まわりつくしてしまうことができますのに、往来おうらいはどこまでいっても、はてしがなかったのです。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はじめは、不思議ふしぎ機関からくり藩主様とのさま御前ごぜんせいふて、おしろされさしけえの、其時そのときこさへたのが、五位鷺ごゐさぎ船頭せんどうぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのしろあとのまん中に、小さな角山かくやまがあって、上のやぶには、めくらぶどうのにじのようにれていました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
名刀は、おしろうらのいちばん大きなまつの根元にうずめてありますから、どうぞ命だけはお助け下さいまし。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「しかしかえりはお前一人だぞ。しろにわへおろしてくれといっても、わしは知らないが、それでもいいのか」
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
燕はなおも心を定めかねて思いわずらっていますうちに、わかい武士とおとめとは立ち上がって悲しそうに下を向きながらとぼとぼとおしろの方に帰って行きます。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
只今ただいまわたくしまつられているあの小桜神社こざくらじんじゃ所在地しょざいち——すこ地形ちけいちがいましたが、大体だいたいあのあたりだったのでございます。わたくしはそこで対岸たいがんのおしろ最後さいごあがるのをながめたのでございます。
とりでしろつきあげて
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
しろちかくさふみて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
もどってみますと、おしろぜんたいが大理石だいりせきづくりになっていて、まっ白なせっこうの彫像ちょうぞうもおいてあれば、きんのかざりもついていました。
高田たかたしろ大手先の広場ひろばに、木をかくけづり尺をしるしてたて給ふ、是を雪竿さをといふ。長一丈也。雪の深浅しんせん公税こうぜいかゝるを以てなるべし。