はた)” の例文
かれ火照ほでりの命は、海佐知うみさち毘古として、はたの廣物鰭の物を取り、火遠理ほをりの命は山佐知やまさち毘古として、毛のあら物毛のにこを取りたまひき。
いつの時代ときよなりけん。紀の国三輪が崎に、大宅おほやの竹助といふ人在りけり。此の人海のさちありて、海郎あまどもあまた養ひ、はたひろき物をつくしてすなどり、家豊かに暮しける。
くに三輪みわさき大宅竹助おおやのたけすけと云うものがあって、海郎あまどもあまた養い、はた広物ひろものものを尽してすなどり、家ゆたかに暮していたが、三人の小供があって、上の男の子は、父に代って家を治め
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
山門やまとはもうまし耶馬台やまと、いにしへの卑弥乎ひみこが国、水清く、野の広らを、稲ゆたに酒をかもして、菜はさはに油しぼりて、さちはふや潟の貢と、うづの貝・ま珠・照るはた。見さくるやわらべが眉に、霞引く女山ぞやま・清水。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
荒海の巌礁がんしょうみ、うろこ鋭く、面顰つらしかんで、はたが硬い。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すなはち悉にはたの廣物鰭のを追ひ聚めて問ひて曰はく、「いましは天つ神の御子に仕へまつらむや」と問ふ時に、諸の魚どもみな「仕へまつらむ」とまをす中に、海鼠白さず。