鮮明せんめい)” の例文
鮮明せんめい玲瑯れいろうな、みがきにみがいたような太陽の光、しかもそれが自分ひとりに向かって放射ほうしゃされているように、自分の周囲がまぼしく明るい。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その中で、どうしたらこの難局を逃れることができるかという、自己防衛の線がだんだん太く鮮明せんめいになり、ほかの一切の想念を駆逐くちくして行った。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは印氣インキたすけをらないで、鮮明せんめい印刷物いんさつぶつこしらえるとかふ、一寸ちよつとくとすこぶ重寶ちようはう器械きかいついてであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
……そうしてそれに似た或る思い出をこんどはさっきと異って、鮮明せんめいに私のうちによみがえらせるのであった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
平次の胸には映し繪のやうに、鮮明せんめいな下手人の姿が浮びました。
其時そのときかれうつくしいやまいろきよみづいろが、最初さいしよほど鮮明せんめいかげ自分じぶんあたま宿やどさないのを物足ものたらずおもはじめた。かれあたゝかなわかいだいて、そのほてりをさまふかみどりへなくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)