魂切たまぎ)” の例文
遂げえぬ悪魔の恋は、必然な、破れかぶれに変ったのである。殺刀さっとうもと魂切たまぎらすことによって、永い間の鬱怨うつえんを思い知らせてやろうとする。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一太刀浴びたらしい魂切たまぎる声が流れるごとに、顔を覆い耳をふさいでいるが、それでも容易に立ち去ろうとはしない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……すると、それと殆ど同時に、混凝土コンクリートの厚い壁を隔てた隣りの六号室から、魂切たまぎるような甲高かんだかい女の声が起った。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
キャーッと魂切たまぎる悲鳴が起った。死人しにんの胸のようなドームの壁体へきたいがユラユラと振動してウワンウワンウワンと奇怪な唸り音がそれに応じたようであった。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「わあ、」と魂切たまぎる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
惣蔵はつかつかと起って行って、上﨟じょうろうたちの中にいるわが妻の側へ寄った。突然、そこで「きゃッ」と魂切たまぎのさけびがしたので、勝頼が、遠くから
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……と、突如——まったく突如として、魂切たまぎるような悲鳴が地底から響いて来た。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
刹那せつな、鞘をあとにおどった武蔵太郎が、銀光一過、うわあッ! と魂切たまぎ断末魔だんまつまの悲鳴を名残りに、胴下からはすかいにねあげられたくだんの男、がっくりと低頭おじぎのようなしぐさとともに
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
磔刑柱はりつけばしらの上にて屹度きつとおもてもたげ、小さき唇をキリ/\と噛み、美しく血走りたるまなじりを輝やかしつゝ乱るゝ黒髪、さつと振り上げて左右を見まはすうち、魂切たまぎる如き声を立てゝ何やら叫びいだせば
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あッ! ……」と優しく魂切たまぎった声——と一緒に、蹴落された少女の姿は落花微塵みじん、隠し持っていた懐剣をほうり投げて、一八郎の側へ仆れるとともにワッと泣き崩れた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
踏み鳴らす足音、打ち込む気合い、魂切たまぎる声、火花、白閃——。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
女はまた前のように、魂切たまぎれるような悲鳴をあげた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)