首肯うけが)” の例文
この二字の前に怪訝けげんな思いをしなければならなかった津田は、一方から見て、またその皮肉を第一に首肯うけがわなければならない人であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを首肯うけがってくれるようなKならいいのですけれども、彼の性質として、議論がそこまでゆくと容易にあとへは返りません。なお先へ出ます。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お延の推測を首肯うけがう前に、彼女の叔父から受けた反問がそれからそれへと続いた。しまいに彼は大きな声を出して笑った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
津田は相手の口にする言葉の価値を正面から首肯うけがうべく余儀なくされた上に、多少彼の歩き方につき合う必要を見出みいだした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本當ほんたうのこんだよ、おくさん。算筆さんぴつ出來できるものは、おれよりほかにねえんだからね。まつた非道ひどところにやちがひない」と眞面目まじめ細君さいくんこと首肯うけがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「本当のこんだよ、奥さん。読み書き算筆さんぴつのできるものは、おれよりほかにねえんだからね。全く非道ひどい所にゃ違ない」と真面目に細君の云う事を首肯うけがった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ヒーローを首肯うけがわない世においては、自他の懸隔けんかく差等を無視する平等観の盛んな時代においては、崇拝畏敬の念を迷信の残り物のごとく取り扱う国柄くにがらにおいては
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのなかに、彼は年に合わしては複雑な実用に適しない頭を有っていながら、年よりも若い単純な性情を平気であらわす子供じゃないかという質問があった。宗助はすぐそれを首肯うけがった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのなかに、かれとしはしては複雜ふくざつ實用じつようてきしないあたまつてゐながら、としよりもわか單純たんじゆん性情せいじやう平氣へいきあらはす子供こどもぢやないかといふ質問しつもんがあつた。宗助そうすけはすぐそれを首肯うけがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かろ首肯うけがう。老人はひげかかげて笑う。兄さんは知らぬ顔をしている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ腹の中で、彼女の言葉をもっともだと首肯うけがった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)