頃者このごろ)” の例文
然るに頃者このごろ米国の宣教師某を訪ひたる時、其卓上に日常のいましめを記せるを見る。其中に言へる事あり、病ある人を友として親しむ可からずと。
漫言一則 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
黎元れいぐわん撫育むいくすることやや年歳としを経たり。風化ふうくわなほようして、囹圄れいごいまむなしからず。通旦よもすがらしんを忘れて憂労いうらうここり。頃者このごろてんしきりあらはし、地しばしば震動す。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
頃者このごろ世に行はれて居る言葉に奮鬪と云ふ言葉があつて、努力と稍や近似の意味を表はして居るが、これは假想の敵がある樣な場合に適當するもので、努力は我が敵の有無に拘らず
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
頃者このごろ年穀ねんこく豊かならず、疫癘やくらいしきりに至り、慙懼ざんくこもごも集りて、ひとりらうしておのれを罪す。これを以て広く蒼生さうせいためあまね景福けいふくを求む。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
頃者このごろ、我劇(別して菊五郎一派)が新らしき趣向をらして客を引かんことに切なるは、元より其の当なり。
劇詩の前途如何 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
頃者このごろ我文学界は侠勇を好愛する戯曲的詩人の起るありて、世は双手を挙げて歓迎すなる趣きあり、侠勇をうたふの時代、未だ過ぎ去らざるか、そもそも他の理想未だ渾沌こんとんたる創造前にありて
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)