青髯あおひげ)” の例文
年の頃二十七八、青髯あおひげの跡の凄まじい、こんな社会によくある精悍せいかんな顔をした男で、いかにも、浮気なお藤に注目されそうな人間でした。
佐久間玄蕃允は、その朝、湯あみもし、剃刀かみそりもあて、青髯あおひげのあと涼やかに、髪まで結いあらためて、もみ紅梅の小袖に、大紋の広袖を着
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
表からずっと這入って来た男は年頃三十二三ぐらいで、色の浅黒い鼻筋の通ったちょっと青髯あおひげの生えた、口許くちもとの締った、利口そうな顔附をして居ますけれども、形姿なりを見るとごく不粋ぶすいこしらえで
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
シャルル・ペロオといえば「サンドリヨン」とか「青髯あおひげ」とか「眠りの森の少女」というような名高い童話を残していますが、私はまったくそれらの代表作と同様に、「赤頭巾」を愛読しました。
文学のふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
もう一人は四十前後、凄まじい青髯あおひげで、頬冠ほおかむりを取って汗を拭いたところを見ると、山賊の小頭が戸惑いして飛込んだ——といった男です。
が、なおりかけているあごの先を、小姓の持つ鏡の前へ突き出して、悠々ゆうゆうと剃り終り、さて剃刀かみそりを置き、鬢盥びんだらいの水で青髯あおひげあとを洗いなどしてから、初めてこっちへ向き直った。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年の頃三十五、六、薄手な四角な顔、すさまじい青髯あおひげ、目が細くて唇が薄くて、何んとなく底の知れない精悍せいかんさがあります。
身丈みのたけのすぐれた三十四、五の男である。かなつぼまなこ青髯あおひげのあとが濃い。関東風というのか、江戸へ近づくに従って、ひどく眼につくのが、着物やすその短いことと、刀の大きいことだった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
カンラカラカラと笑い飛ばすと、刻みの深い物凄い顔のひもゆるんで、群青ぐんじょうで描いたような青髯あおひげの跡までが愛嬌あいきょうになります。
「あ、じゃ向う側に添ってゆく、あの青髯あおひげのこい大男ですね」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥へ担ぎ込まれて、ほうり出すように引据えられたお珊、思わず四方あたりを見廻すと、目の前に坐っているのは細面に青髯あおひげの目立つ、ちょっと凄い感じのする若い男。
越後屋の主人が確かに顔を見たと言っているが、色白で四十前後で、ベットリと濃い青髯あおひげの跡のある、とだけじゃ——そんな浪人者は江戸に何百人いるか解らない
まだ三十そこそこでしょうが、青髯あおひげのある、凄いほどの男前。これが身を持崩さして、腕も家柄も申分のないのが、両刀を捨てて、遊び人の仲間に陥込おちこませた原因でしょう。
「あの青髯あおひげの四角な男が、信吉の妹のお浜にれて、執念深く口説き回したそうですよ、貧乏臭い深草の少将ですね。半年位は通ったというから恐ろしい執念じゃありませんか」
一刀をひっさげて、上がりかまちにヌッと突っ立ったのは、青髯あおひげの跡すさまじい中年の浪人です。
百石をんだ立派な武士、取って四十五という、格服の良い青髯あおひげの浪人者、それから瀬左衛門と負けず劣らず、仲間で立てられて居るのは、早川水右衛門というこれも浪人者、年は五十五
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
なるほど四十三四の青髯あおひげ、人相は凄まじいが、その割には腰の低い男です。
響きの音に応ずるように、物々しい返事と一緒に戸口の障子を開けたのは、四十五六とも見える青髯あおひげの武張った浪人、門札を見ると、岩根半蔵と唐様からようの四角な文字で書いてあるのも人柄が忍ばれます。