陰府よみ)” の例文
「かくの如く人もね臥してまた起きず、天の尽くるまで目覚めず睡眠ねむりを醒まさざるなり」とは、死後陰府よみにおける生活を描いたもので
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その結果我々ははげしき痙攣けいれん苦痛なくして救われたが、イエスの身は呪いとなって、一たび陰府よみの底深く沈み給うたのです。
西北の強風は三日の間小休こやすみもなく吹き、昼さえ陽の目を見せぬ陰府よみのような陰闇いんあんたる海をただよわしたすえ、四日午後になって、やっとのことで勢をおさめた。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
(月雲にかくる)あゝ信頼のぶよりの怨霊よ。成親なりちかの怨霊よ。わしにつけ。わしにつけ。地獄じごくに住む悪鬼あっきよ。陰府よみに住む羅刹らせつよ。湿地しっちに住むありとあらゆる妖魔ようまよ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
胎児の状態にある陰府よみの中の世界、何という異常な幻であるか!
陰府よみなるかどのきしりかも
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
故に陰府よみと死とのかぎ(秘密)を握り今ある所の事(今世の事)と後ある所の事(来世の事)とを知り給う(同十八、十九節)
すると、このわたしが三階から走りだし、ひかれるようにそのそばへ寄って行く。なにか儚く、もの悲しく、そのまま陰府よみへでもひきこまれるような気持がする。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
俊寛 (前のところに不安そうに立ったまま)あの船は陰府よみから来たように見える。(心の内にさす不吉の陰を払いのけるように首を振る) わしはばかげた妄想もうそうなやまされているかもしれないぞ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
陰府よみに繋がる魂を解き
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
「その高きことは天の如し、汝なにをし得んや、その深きことは陰府よみの如し、汝なにを知り得んや、その量は地よりも長く海よりもひろし」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
吹く風も妙に湿って、さながら陰府よみからでも吹いて来たよう。このものすごい山道を乏しい前照灯フェランの光りだけで辿たどって行く心細さ、恐ろしさ。臆病未練なコン吉は、もう魂も身にそわないような心持。
まるで陰府よみからわき上がりでもしたように。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
これ世を去って陰府よみに往かんとの心を言い表わしたものである。けだし旧約時代においては、死者は陰府(Sheol)という暗黒世界に住むと信ぜられていたのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)