附紐つけひも)” の例文
二つ違いの兄弟とは言っても泉太と繁とはほとんど同じたけの着物で間に合った。二人の子供は父がそこへ取出したのを附紐つけひものしるしで見分けて、思い思いに着た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「赤※坊の着物きものなの。こしらへた儘、つい、まだ、ほどかずにあつたのを、今行李こりそこたらつたから、してたんです」と云ひながら、附紐つけひもいて筒袖つゝそでを左右にひらいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
附紐つけひものひら/\と長くれたメリンスの着物にくるんだ赤ん坊を負ぶつた里行きらしいかみさんや、ぢいさんばあさんの老人づれ、背負商人、青服を着た職工、お坊さん、田舎娘
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
僕の室の欄間らんまには五、六十の面を掛けて、僕のその頃の着物は、たもとの端に面のちらし模様が染めてあって、附紐つけひも面継めんつぎの模様であったのを覚えています位、僕が面好きであったと共に
ここらは甲斐絹裏かいきうらを正札附、ずらりと並べて、正面左右の棚には袖裏そでうらほっそり赤く見えるのから、浅葱あさぎ附紐つけひもの着いたのまで、ぎっしりと積上げて、小さな円髷まげに結った、顔の四角な、肩のふとった
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「赤んの着物なの。拵えたまま、つい、まだ、ほどかずにあったのを、今行李の底を見たら有ったから、出して来たんです」と云いながら、附紐つけひもを解いて筒袖を左右に開いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)