関所せきしょ)” の例文
旧字:關所
兵士が笑って、銃剣じゅうけんさきで蛇をつっかけて、堤外ていがいほうり出した。無事にこの関所せきしょも越して、彼は母と姉と嘻々ききとして堤を歩んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いたずらに最後の決戦をいそいで、千や二千の小勢こぜいをもって、東海道とうかいどうめのぼったとて、とちゅうの出城でじろ関所せきしょでむなしく討死うちじにするのほかはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徘徊はいかいする引四時過ひけよつすぎの寂しさか(『絵本江戸土産』巻六)然らずば仲之町なかのちょう木戸口きどぐちはあたかも山間の関所せきしょの如く見ゆる早朝の光景(江戸百景のうち廓中東雲しののめ
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ことに村の入り口の関所せきしょとあだ名のあるよろずやのおかみさんときたら、岬の村へくるほどの人は、だれよりも先にじぶんが見る権利けんりがある、とでもいうように
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
かぜが中へきこんでてはいけないぞといっててた関所せきしょであるはずなのに、どうしてこんなにとおみちもふさがるほど、山桜やまざくらはながたくさんりかかるのであろう。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
鎖藩さはんの政略は、日本全州に行われ、函嶺かんれい関所せきしょを通行するの難きは、仏人がアルサス、ローレンズを通行するの難きよりも難く、年々歳々東西南北の諸大名が、その行列供連ともづれして
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その者のことばで、伊那丸のとおる道がわかったから、関所せきしょに兵をせておいて、もなくしばりあげたのじゃ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、富士ふじ裾野すその迂回うかいして、相模さがみざかいへくると、無情な北条家ほうじょうけではおなじように、関所せきしょをもうけて、武田たけだ落武者おちむしゃがきたら片ッぱしから追いかえせよ、と厳命してあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)