長逗留ながとうりゅう)” の例文
とはいえ、時にはウチで奉公しろとか、ウチの子供になれ、とか言ってくる人もいたが、五六日いると窮屈で、長逗留ながとうりゅうはできなかった。
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
※の兄と連立って、名倉の母が長逗留ながとうりゅうの東京を去る頃は——三吉は黙って考えてばかりいる人でもなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ここへ食客となって長逗留ながとうりゅうしたまま、いつかずるずるべったり頼朝の右筆ゆうひつとなってしまい、また、近郷の絵図など根気よく描いている画工藤原邦通くにみちであった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも、私は最初から長逗留ながとうりゅうをするつもりでその下宿に連れてこられたのではない。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
これまでわたしたちはけっしてとちゅうの町で長逗留ながとうりゅうをすることはなかった。なぜというに、しじゅう見物をかえる必要ひつようから、しぜん毎日興行こうぎょうの場所をもえなければならなかった。
室香に約束はたがえど大丈夫青雲の志此時このときのぶべしと殊に血気の雀躍こおどりして喜び、米国より欧州に前後七年の長逗留ながとうりゅう、アヽ今頃いまごろ如何どうして居おるか、生れた子は女か、男か、知らぬ顔に、知られぬ顔
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
京阪地かみがたの方だそうで、長逗留ながとうりゅうでござりました。——カチリ
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「我等三人。チト長逗留ながとうりゅうを致すかも知れぬが。好いか」
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
彼女はおまきが代筆した母お民からの手紙でも読み、弟宗太も西筑摩ちくま郡書記の身でそう馬籠での長逗留ながとうりゅうは許されないとあって、木曾福島の勤め先へ引き返した時のじきじきの話にも聞いて
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長逗留ながとうりゅうの退屈ばらし、それにはれた軽はずみ……
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長逗留ながとうりゅうの心はなけれど。……その朝臣とは」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんなに半蔵も長逗留ながとうりゅうで、追い追いとふところの寒くなったところへ、西の方からは尾張おわりの御隠居を総督にする三十五藩の征長軍が陸路からも海路からも山口の攻撃に向かうとのうわさすら伝わって来た。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)