銀河あまのがわ)” の例文
銀河あまのがわはいつか消えて、うす白い空の光りはどこにも見えなかった。お絹を乗せてゆく駕籠のはなを、影の痩せた稲妻が弱く照らした。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
夜空を斜めに、銀河あまのがわがかかっていた。一つ一つ、その無数な大小の星を、数えているのではなかろうかと疑われるほど、根気よく、かの女は顔をあげていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空には銀河あまのがわが月光にぼかされ、少し光を鈍めてはいたが、しかし巾広く流れてい、七ツ星さえ姿を見せていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かささぎの橋をすべって銀河あまのがわを渡ったと思った、それからというものは、夜にってこの伊勢路へかかるのが、何か、雲の上の国へでも入るようだったもの、どうして、あの人形に
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫婦はそれぎり話を切り上げて、またとこを延べてた。夢の上に高い銀河あまのがわが涼しくかかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
因ってスペイン人は今も銀河あまのがわをエル・カミノ・デ・サンチアゴ(サンチアゴ道)と呼ぶ。
二階の窓から見あげると、大きい山の影は黒くそびえて、空にはもう秋らしい銀河あまのがわが夢のように薄白く流れている。
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「なあ、お芳。——祭りだぜ、秋の銀河祭りだ。そうそう、去年の今ごろは、てめえとよく会っていたなあ、銀河あまのがわの下に寝て、ふたりとも風邪かぜをひいたこともある」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金石街道の松並木、ちょうどこの人待石から、城下の空を振向くと、陽春三四月の頃は、天の一方をぽっと染めて、銀河あまのがわの横たうごとき、一条ひとすじの雲ならぬくれないの霞がかかる。……
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この頃範覚は京都の町を、銀河あまのがわを頭上にいただきながら、朗らかな顔をして歩いていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……あれ、誰か客人だと思ったら——わしの顔だ——道理で、兄弟分だと頼母たのもしかったに……宙に流れる川はなし——七夕たなばた様でもないものが、銀河あまのがわには映るまい。星も隠れた、真暗まっくら
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
窓いっぱいに銀河あまのがわだ。その星の色を吹きこぼすような風が、秋のあわただしさを跫音にもって、灯のない部屋の二つの寝顔をでて通りぬける。裏の物干ものほしで干し物竿ざおが、からからと鳴る。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人のおんなが、その姿で、沓脱くつぬぎささを擦るつまはずれ尋常に、前の浅芽生あさぢうに出た空には、銀河あまのがわさっと流れて、草が青う浮出しそうな月でしょう——蚊帳釣草かやつりぐさにも、たでの葉にも、萌黄もえぎあい
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天をつらぬいている銀河あまのがわも映らない。足もとの河原草もさえぎらない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)