釜山ふざん)” の例文
釜山ふざんから馬関ばかんへ渡る船中で、拓殖たくしょく会社の峰八郎君みねはちろうくんの妻君にったとき、八郎君は真面目まじめな顔をして、これは夏目博士と引き合した。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その結果、現官のままの吾輩を中心にして東洋水産組合というものが認可されて本拠を釜山ふざんの魚市場に近い岩角がんかくの上に置いた。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こゝは釜山ふざんから京城けいじよう汽車きしやつて、一時間いちじかんばかりで大邱たいきゆうき、そこで下車げしやして自動車じどうしやひがしほう三四時間さんよじかんはしるとすぐかれるところです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
船で釜山ふざんへ渡り、京城行きの汽車に乗った。車窓からの景色は、国外に初めて出た俺には何もかも物珍しく眺められた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
これらの従軍記者は宇品うじなから御用船に乗り込んで、朝鮮の釜山ふざんまたは仁川に送られたのですが、前にもいう通り、何分にも初めての事で、従軍記者に対する規律というものが無いので
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
人知れず陣中を脱出して釜山ふざんより名護屋に帰り、ついで京都に上ったのであるが、その途中から盲人の真似をし始め、琵琶を背負うて京上りをするめくら法師になり変ったのであると云う。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
英国産の金巾カナキンを先頭とする欧米商品は日本商人の独占的仲介を経て釜山ふざんから、元山げんざんから、旧朝鮮を揺動かしつつあったくせに、依然日本以外の国にたいしては厳として門戸を閉じていたから
撥陵遠征隊 (新字新仮名) / 服部之総(著)
スッテンテンの無一物となった三十八年の十一月の末、裾縫すそぬいの切れた浴衣一枚で朝鮮に逃げ渡り釜山ふざん漁業組合本部に親友林駒生こまお氏を訪れた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その中の一つで釜山ふざんに起った事件は、その当時、本紙にも載ったから思い出す人もあるであろう。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
釜山ふざん日報主筆、篠崎昇之助氏、その他、水茶屋みずぢゃや券番けんばんの馬賊五人組芸者として天下に勇名を轟かしたおえん、お浜、お秋、お楽、等々その中心の正座が勿体なくも枢密院顧問
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
玄海灘と釜山ふざんの港内を七分三分に見下ろした巌角がんかくの上の一軒家と来ているんだからね。一層風当りがヒドイ訳だよ。……世界の涯に来たような気がする……ハハハ。しかしこのうちなら大丈夫だよ。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)